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AI-OCRとは?
OCRとの違いや導入メリット、選定ポイントを詳しく解説

更新日:2026年2月20日

紙の書類をデータ化する作業は時間と人手がかかり、多くの企業にとって大きな業務効率化の課題となっています。こうした課題を解決する手段として、AI技術を活用した「AI-OCR」の導入を進める企業や自治体が増えています。

本記事では、AI-OCRの仕組みや従来のOCRとの違い、導入によって得られるメリットを詳しく解説します。製品タイプごとの特徴や、選定時に押さえておきたいポイントも紹介しますので、導入を検討する際の参考にしてください。
 

AI-OCRとは

AI-OCR(AI Optical Character Recognition)は、AI技術を活用して紙の書類や画像データから文字情報を読み取り、デジタルデータへ変換する技術です。機械学習やディープラーニングといったAI技術を活用しており、読み取りを繰り返すたびに認識精度が向上する点が特徴です。

AI-OCRでは、請求書や契約書、申込書、アンケートなど、様々な種類の帳票に対応できます。また、印字された文字だけでなく手書き文字も読み取れるため、業務効率化やペーパーレス化を目的として、多くの企業や自治体が導入を進めています。
 

AI-OCRとOCRの違い

従来のOCRは、あらかじめ登録されたパターンと照合して文字を識別する方式でした。統一されたフォーマットに印字された文字であれば問題なく読み取れる一方、手書き文字や非定型のレイアウトには対応が難しいという課題を抱えていました。

AI-OCRでは、ディープラーニングによって文字の形状や特徴を学習し続けるため、こうした課題を克服しています。筆跡に癖のある手書き文字やレイアウトが複雑な帳票であっても、高い精度での読み取りが可能です。

また、従来のOCRでは帳票ごとに読み取り位置を細かく設定する必要がありましたが、AI-OCRは読み取り領域を自動で判断できるため、設定にかかる手間も大幅に削減できます。
 

AI-OCRを導入するメリット

AI-OCRを導入することで、企業は以下のようなメリットを得られます。

  • 高精度な文字認識を実現できる
  • 多様なフォーマットの帳票に対応できる
  • 他システムとの連携で業務効率化につながる
  • 業務の自動化とペーパーレス化を推進できる

それぞれ詳しく解説します。
 

高精度な文字認識を実現できる

AI-OCRはディープラーニングを通じて文字の形状や特徴を学習したモデルを使用するため、従来のOCRと比較して認識精度が大きく向上しています。印字された活字だけでなく、筆跡に癖のある手書き文字でも読み取ることが可能です。

さらに、製品によっては使用を重ねるごとに学習が進み、認識精度が継続的に改善される機能を持つものもあります。継続学習機能を持つ製品の場合、導入直後よりも長く運用するほど精度が高まるため、長期的な視点で見ると費用対効果も向上しやすい仕組みになっています。
 

多様なフォーマットの帳票に対応できる

AI-OCRの多くは読み取り領域を自動で判断する機能を備えているため、レイアウトやフォーマットが異なる帳票にも対応可能です。取引先ごとに様式が異なる請求書や契約書、申込書などを扱う場合でも、帳票ごとに細かな設定を行う必要がありません。

定型・非定型を問わず幅広い書類に対応可能なため、導入時の初期設定や日々の運用にかかる手間を抑えながら、様々な業務シーンで活用できます。
 

他システムとの連携で業務効率化につながる

AI-OCRは単体で使用するだけでなく、RPAや基幹システムと連携させると、さらなる効率化が見込めます。読み取ったデータを業務システムへ自動入力する仕組みを構築すれば、人手を介さない完全自動化も実現可能です。

データの読み取りから入力、確認に至るまでの一連の流れを自動化すれば、作業時間を短縮できるだけでなく、手入力によるミスも防げます。

RPAについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:RPAとは?導入するメリットやデメリット、活用事例を紹介
 

業務の自動化とペーパーレス化を推進できる

紙の書類をデジタルデータに変換すれば、目視でのチェックや手入力などの手作業を減らし、業務全体の自動化を進められます。書類の保管スペースや印刷コスト、郵送費用といった付随する経費も削減できるため、長期的なコストメリットも期待できます。

また、紙で保管していた書類を電子データとして一元管理すれば、必要な情報をすぐに検索・参照できるようになります。情報へのアクセス性が高まると同時に、コンプライアンスやセキュリティの強化にもつながる点がメリットです。

ペーパーレス化についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:ペーパーレス化とは?導入のメリット・デメリットや進め方、成功事例を詳しく解説
 

AI-OCRのデメリット

AI-OCRには多くのメリットがある一方で、導入前に把握しておくべきデメリットも存在します。メリットとデメリットの両面を理解した上で、導入の可否を判断しましょう。
 

導入・運用にコストがかかる

AI-OCRを導入する際は、ソフトウェアのライセンス費用やシステム構築費用などの初期投資が必要です。導入後も月額利用料や保守管理費用などのランニングコストが発生するため、事前に費用対効果を検討しておく必要があります。

ただし、業務効率化によって得られる人件費の削減効果や作業時間の短縮効果を踏まえると、中長期的には投資を回収できるケースも少なくありません。導入時のコストだけでなく、運用後の効果まで含めて総合的に判断しましょう。
 

文字認識の精度が完璧ではない

AI-OCRは従来のOCRよりも高い認識精度を誇りますが、あらゆる文字を100%正確に読み取れるわけではなく、読み取り精度は帳票の状態や文字の種類によって変動します。手書き文字の癖が強い場合や紙に汚れ・かすれがある場合、縦書きや特殊な書式が使われている場合などは、認識精度が低下する可能性があります。

そのため、読み取り後に人間が内容を確認・修正する工程を業務フローに組み込んでおくと安心です。AI-OCRはあくまで作業負担を軽減するツールであり、最終的なチェックは人の目で行う前提で運用設計を進めましょう。
 

AI-OCRの主な種類

AI-OCRは対応するフォーマットの範囲や業務の専門性によって、以下の3つの種類に分類されます。

  • 汎用×定型フォーマット型
  • 汎用×非定型フォーマット型
  • 業務特化×非定型フォーマット型

それぞれの特徴を理解した上で、自社で扱う帳票の種類に適したタイプを選ぶことが導入を成功させるポイントです。
 

タイプ

対応フォーマット

主な用途

設定の手間

汎用×定型フォーマット型

定型のみ

社内統一フォーマットの申請書、定型の発注書など

読み取り位置の事前設定が必要

汎用×非定型フォーマット型

定型・非定型両対応

取引先ごとに様式が異なる請求書、領収書、申込書など

自動判断のため設定不要

業務特化×非定型フォーマット型

非定型対応(業界特化)

診療報酬明細書、金融業界の申込書類など専門帳票

自動判断のため設定不要


 

汎用×定型フォーマット型

「汎用×定型フォーマット型」は、あらかじめ決まったレイアウトの帳票を読み取る用途に適したAI-OCRです。社内で統一されたフォーマットの申請書や、毎回同じ様式で届く発注書など、同一レイアウトの書類を繰り返し処理する業務に適しています。

事前に読み取り位置を設定する手間はかかりますが、定型帳票であれば安定した認識精度を発揮します。また、他のタイプと比べて導入コストを抑えやすい点も特徴です。
 

汎用×非定型フォーマット型

「汎用×非定型フォーマット型」は、レイアウトやフォーマットが統一されていない多様な帳票に対応できるAI-OCRです。取引先ごとに様式が異なる請求書や領収書、申込書などを扱う業務で効果を発揮します。

汎用×非定型フォーマット型はAIが読み取り領域を自動で判断するため、帳票ごとに細かな設定を行う必要がありません。導入後の運用負荷を抑えられる点が魅力で、様々な書類を扱う部門での活用に適しています。
 

業務特化×非定型フォーマット型

「業務特化×非定型フォーマット型」は、特定の業種や業務に最適化されたAI-OCRです。医療業界で使用される診療報酬明細書や金融業界の申込書類など、専門性の高い帳票を高精度で読み取れるように設計されています。

業界特有の用語や書式に対応しており、非定型フォーマットにも柔軟に適応できるため、専門性の高い業務で役立ちます。
 

AI-OCRを選定する際のポイント

AI-OCRは製品によって機能や価格、対応範囲が異なります。自社に合わない製品を選んでしまうと、期待した効果が得られない可能性もあるため、選定時には以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

  • 文字認識の精度と対応範囲を確認する
  • 操作性とシステム連携の可否を確認する
  • サポート体制と導入実績を確認する
     

文字認識の精度と対応範囲を確認する

製品を比較検討する際、まず注目すべきは文字認識の精度です。手書き文字をどこまで認識できるか、特殊な書式や複数言語に対応しているかなど、業務上の要件を満たす機能が揃っているかを確認しましょう。

製品選定で失敗を避けるには、導入前のトライアルが有効です。実際に使用する帳票をサンプルとして読み取らせれば、カタログのスペックだけでは分からない実力を把握できます。
 

操作性とシステム連携の可否を確認する

AI-OCRを現場で定着させるには、従業員が直感的に使える操作性が求められます。設定やアップロードの手順が複雑な場合、現場での利用が進まない可能性があるため、日常的な操作がシンプルな製品を選びましょう。

あわせて、既存システムとの連携性もチェックしておきたいポイントです。基幹システムやRPAとスムーズにデータを受け渡せる製品であれば、読み取りから入力までを自動化でき、業務効率化の幅が広がります。
 

サポート体制と導入実績を確認する

AI-OCRの運用を続けていくなかで、疑問点やトラブルが発生する場面は多く見られます。ベンダーのサポート範囲は製品によって異なるため、問合せ手段や対応時間、緊急時のサポート可否などを事前に確認しておきましょう。

製品の信頼性を見極める材料としては、導入実績も参考になります。自社と同じ業種や企業規模での採用例が豊富であれば、業務への適合性が高いと判断できます。
 

AI-OCR導入の成功事例

以下では、AI-OCRを導入して業務効率化に成功した自治体の事例を紹介します。自社での導入を検討する際の参考にしてください。
 

石川県輪島市:給与支払報告書の入力作業を大幅に効率化

石川県輪島市では、毎年届く5,000~6,000枚の給与支払報告書の処理が税務部門の負担となっていました。従来は6人体制で約1ヶ月を要していましたが、給与支払報告書の読み取りに特化したAI-OCRを導入したことで、作業効率が大幅に向上しました。

導入後は読み取り作業が3~4日で完了し、確認作業を含めても2人体制・約2週間で入力業務を終えられるようになりました。

読み取り精度は99%以上を記録しており、能登半島地震が発生した際にも課税業務を期限内に完了できるなど、業務の安定化にも貢献しています。
 

大阪府豊中市:複数業務への展開で年間1万時間超の削減を達成

大阪府豊中市では、デジタル技術を活用した働き方改革の一環として、令和2年度からRPAとAI-OCRの本格導入を開始しました。令和6年3月時点で83の業務に展開し、年間1万時間を超える作業時間の削減を実現しています。

活用範囲は、オンライン申請で受け取ったデータの基幹システムへの入力作業や、各種帳票の処理業務など多岐にわたり、職員1人あたりの残業時間も約2割減少しました。申請様式を読み取りやすい形式に変更するなど、認識精度を高める工夫も成果につながっています。

働き方改革EXPO

(生成AI・DXなど業務改革のための展示会)

【開催スケジュール】

■【東京】総務・人事・経理Week [春]
2026年6月17日(水)~19日(金) 東京ビッグサイト
東京展 公式HP>>

■【東京】総務・人事・経理Week[秋]
2026年9月16日(水)~18日(金) 東京ビッグサイト
東京展 公式HP>>

■【関西】総務・人事・経理Week
2026年11月18日(水)~20日(金) インテックス大阪
関西展 公式HP>>

■【名古屋】総務・人事・経理Week
2027年7月21日(水)~23日(金) ポートメッセなごや
名古屋展 公式HP>>

AI-OCRで業務効率化と競争力強化を実現しよう

AI-OCRは、AI技術を活用して紙文書から文字情報を読み取り、デジタルデータへ変換する技術です。高い認識精度と多様なフォーマットへの対応力を備えており、他システムとの連携によって業務の自動化やペーパーレス化を推進できます。

AI-OCRには3つの種類があり、自社の要件に合った製品を選ぶことで、業務効率の改善と競争力の強化につなげられます。データ入力業務の負担を課題に感じている企業は、ぜひAI-OCRの導入をご検討ください。


■監修者情報

持木 健太(もちきけんた)
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 中小企業診断士

DX推進の総責任者として、テレワーク環境構築・ペーパーレス化・電子帳簿保存法対応・ビジネスモデルの再構築などで活躍中。企業の労働生産性向上や付加価値向上を目指して、中小企業から上場企業まで幅広く対応している。

HP: https://toma.co.jp/