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ペーパーレス化とは?
導入のメリット・デメリットや進め方、成功事例を詳しく解説
更新日:2026年2月20日
働き方改革の推進やテレワークの普及を背景に、紙の書類を電子データに置き換える「ペーパーレス化」への関心が高まっています。
ペーパーレス化はコストの削減や業務効率の向上、セキュリティ強化など、企業経営全体に多くのメリットをもたらす施策です。
本記事では、ペーパーレス化が推進される理由や導入のメリット・デメリット、具体的な進め方を詳しく解説します。実際に成果を上げた企業の事例も紹介しますので、自社での導入を検討する際に参考にしてください。
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化は、紙で運用してきた書類や資料を電子データに切り替え、紙の使用量を削減する取り組みです。単に紙を減らすだけでなく、書類の作成から保管、社内外への共有、不要になった際の廃棄まで、業務プロセス全体をデジタルで完結させます。
テレワークの普及により場所を問わず働ける環境が求められるようになったこと、さらには環境負荷への意識の高まりも相まって、ペーパーレス化に着手する企業は年々増加しています。
ペーパーレス化の対象となる書類
電子化の対象となる書類の種類は幅広く、社外との取引で発生する文書から社内で使用する文書まで多岐にわたります。主な対象書類は以下のとおりです。
分類 |
主な書類 |
取引関連書類 |
契約書、見積書、発注書、納品書、請求書、領収書 |
社内書類 |
稟議書、申請書、報告書、議事録、マニュアル |
会計・経理書類 |
帳簿、決算書類、経費精算書 |
2022年に電子帳簿保存法が改正されたことで、電子保存が認められる書類の範囲は以前より広がりました。ただし、全ての書類がデジタル化できるわけではありません。
法令上、紙での原本保管が義務付けられているものや、取引先との関係で紙での提出を求められるケースも残っています。まずは自社で扱っている書類を洗い出し、電子化が可能なものとそうでないものを整理することがペーパーレス化の第一歩です。
ペーパーレス化が推進される理由
ペーパーレス化への取り組みが広がる背景には、社会環境や法制度の変化が関係しています。働き方改革の推進により、テレワークや時短勤務などの柔軟な勤務形態が浸透し、オフィス以外の場所でも業務を進められる環境整備が求められるようになりました。
また、2022年の電子帳簿保存法改正に続き、2024年1月からは電子取引データの電子保存が義務化され、多くの企業が対応を迫られています。加えて、DX推進による競争力強化やSDGsへの取り組みなど、企業の持続的な成長戦略としても重要性が高まっています。
ペーパーレス化のメリット
書類や資料を電子データに置き換えると、以下のようなメリットが得られます。
- コストの削減
- 業務の効率化
- 保管場所の省スペース化
- セキュリティの強化
- 働き方改革の実現
それぞれ詳しく解説します。
コストの削減
ペーパーレス化を進めると、紙代や印刷代、インク代などの消耗品にかかる費用を抑えられます。書類を郵送する際の切手代や封筒代、保管用の倉庫にかかる賃料、廃棄時の処分費用なども削減対象です。
経費の節減分を設備投資や人材育成に振り向けることで、企業の競争力を底上げする原資にもなります。
業務の効率化
紙の書類を電子データ化すると、必要な情報を探す手間が軽減され、社内外への共有もスムーズになります。電子データはファイル名やキーワードで検索できるため、キャビネットをひとつずつ開けて目当ての書類を探す必要はありません。
また、承認フローや回覧作業もシステム上で完結するため、決裁までの時間を短縮できる点もメリットです。オフィスにいなくても書類を確認できる環境が整えば、外出先や自宅からでも業務を進められます。
保管場所の省スペース化
紙の書類が減ると、キャビネットや書庫に割いていたスペースを別の用途に活用できます。法令で長期保存が求められる書類を大量に保管している企業ほど、省スペース化の効果は顕著です。
空いたスペースを会議室やリフレッシュコーナーに転用すれば、オフィス環境の改善にもつながります。外部倉庫を借りて保管している場合は、契約の縮小や解約によって固定費の削減も見込めます。
セキュリティの強化
紙の書類には、紛失や盗難、火災・水害による消失などのリスクが伴います。電子データであればクラウド上に保管でき、物理的な被害を受けにくくなります。
また、アクセス権限を細かく設定すれば、閲覧や編集ができる人を限定することも可能です。誰がいつファイルを開いたかをログで追跡できるため、情報漏洩の抑止にも役立ちます。万が一に備えてバックアップ体制を整えておけば、データ消失時も速やかに復旧できます。
働き方改革の実現
書類が電子化されていれば、オフィスに出社しなくても必要な情報にアクセスできます。テレワークやフレックス勤務など多様な働き方を導入しやすくなり、従業員のワークライフバランス向上を後押しします。
さらに、印刷や書類整理などの定型作業から解放されることで、企画立案や顧客対応など、より付加価値の高い業務に時間を充てられる点もメリットです。
ワークライフバランスについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
ペーパーレス化のデメリットと注意点
ペーパーレス化には多くの利点がある一方で、導入時に押さえておくべき課題も存在します。
- 初期投資が必要になる
- 視認性や操作性に課題がある
- システム障害のリスクがある
- 従業員のITリテラシーに差が生じる
- 電子化できない書類が存在する
それぞれ順に見ていきましょう。
初期投資が必要になる
ペーパーレス化を進めるには、文書管理システムやスキャナー、タブレット端末といったITツールの導入費用がかかります。全社的に展開する場合、機器の調達だけでなく、環境構築や運用設計にも相応の時間と労力が必要です。
導入後も保守管理費やライセンス料などのランニングコストが発生するため、投資に見合う効果が得られるかを事前に試算しましょう。
視認性や操作性に課題がある
紙の書類は複数ページを並べて見比べたり、余白にメモを書き込んだりしやすい利点があります。一方、電子データでは画面サイズに制約があり、慣れるまでは操作に戸惑う場面も出てきます。
また、小さな画面では文字が読みにくく、長時間の閲覧で目が疲れやすい点も問題です。タッチペン対応のデバイスを導入するなど、紙に近い感覚で扱える環境を整えると移行がスムーズに進みます。
システム障害のリスクがある
電子データに依存する体制では、サーバーダウンやネットワーク障害が発生した際に業務が停止してしまうおそれがあります。停電や機器の故障によって、必要な書類にアクセスできなくなる事態も想定しなければなりません。
こうしたリスクに備え、以下のような対策を講じることが重要です。
- 定期的なバックアップ: 日次・週次でのデータバックアップ体制の構築
- クラウドサービスの併用: 複数拠点でのデータ保管によるリスク分散
- BCP(事業継続計画)の策定: システム障害発生時の業務継続手順の明確化
従業員のITリテラシーに差が生じる
新しいシステムやツールを導入すると、ITに理解のある従業員とそうでない従業員の間で習熟度に差が生じます。特にデジタル機器の操作に不慣れな世代では、かえって作業効率が低下してしまうケースも珍しくありません。
研修の実施やマニュアルの整備を通じて、全員が無理なく移行できるサポート体制を構築しましょう。困った時に相談できる窓口を設けておくと、現場の不安を軽減できます。
電子化できない書類が存在する
全ての書類を電子データに置き換えられるわけではありません。「事業用定期借地権設定契約書」や「任意後見契約書」など、一部の契約書は書面での締結が法令で義務付けられています(2025年11月現在)。
また、取引先との関係で紙での提出を求められる場合もあるため、電子化する書類と紙で残す書類を明確に区分し、それぞれの運用ルールを定めておくことが大切です。
なお、法改正によって電子化可能な書類の範囲は拡大傾向にあるため、最新の法令を定期的に確認しましょう。
ペーパーレス化の進め方
ペーパーレス化は、計画的に段階を踏んで進めるのがポイントです。以下では、導入を軌道に乗せるための7つのステップを詳しく解説します。
① 導入目的を明確にする
② 対象範囲と優先順位を決める
③ ツール・システムを選定する
④ 運用ルールを策定する
⑤ 従業員への教育と周知を行う
⑥ 小規模から段階的に導入する
⑦ 定期的な見直しと改善を行う
①導入目的を明確にする
ペーパーレス化を進める際は、まず「なぜペーパーレス化を進めるのか」を明確にする作業からはじめます。コスト削減を優先するのか、業務効率化を目指すのか、あるいは働き方改革の一環として位置付けるのか、自社が解決したい課題や達成したいゴールを具体的に設定しましょう。
目的が曖昧なまま進めると、現場の理解を得られず取り組みが形骸化する可能性があります。経営層と現場の双方が共通認識を持てる状態を作ることで、スムーズな導入につながります。
②対象範囲と優先順位を決める
全ての書類を一度に電子化しようとすると、コストも労力も膨大になり、途中で頓挫するリスクが高まります。まずは社内で扱っている書類を洗い出し、電子化による効果が高く、かつ実現しやすいものから着手しましょう。
請求書や契約書など使用頻度の高い書類、あるいは保管スペースを圧迫している書類を優先すると、早い段階で成果を実感できます。
③ツール・システムを選定する
自社の業務内容や組織規模に適した文書管理システム、スキャナー、電子契約サービスなどを選びます。選定時には以下の観点を重視しましょう。
- 既存システムとの統合性: ERP、CRM、会計システムなどとのAPI連携の可否
- 操作性とユーザビリティ: 従業員が直感的に使えるインターフェース
- セキュリティ要件: ISO27001準拠、暗号化、アクセス制御などの機能
- スケーラビリティ: 将来的な業務拡大に対応できる拡張性
- 導入後のサポート体制: ベンダーの技術サポートやトレーニング提供
無料トライアルやデモンストレーションを活用し、実際の業務で問題なく運用できるかを確かめてから導入を決定すると、後々のミスマッチを防げます。
④運用ルールを策定する
ペーパーレス化を円滑に進めるには、書類のファイル名の付け方、保存先のフォルダ構成、アクセス権限の設定、保存期間の管理など、明確な運用ルールの策定が不可欠です。
ルールが統一されていないと、必要なファイルが見つからない、誤って削除してしまうなどのトラブルが起きやすくなります。誰が見ても迷わないシンプルなルールを設定し、マニュアルとして文書化しておくと運用が安定します。
⑤従業員への教育と周知を行う
新規システム・ツールの導入時には、従業員への教育と周知が求められます。操作方法の説明だけでなく、ペーパーレス化の目的や期待できるメリットを丁寧に伝え、現場の理解と協力を得ることが大切です。
研修会の開催やマニュアルの配布に加え、疑問点を気軽に相談できる窓口を設けておくと、従業員の不安を和らげながらスムーズに移行を進められます。
⑥小規模から段階的に展開する
ペーパーレス化はいきなり全社へ展開するのではなく、特定の部署や業務から試験的に導入し、課題を洗い出してから範囲を広げていく方法が効果的です。小規模でスタートすれば運用上の問題点を早期に発見でき、リスクを最小限に抑えられます。
成功事例を社内で共有することで、他部署への展開時にも協力を得やすくなります。
⑦定期的な見直しと改善を行う
ペーパーレス化は導入して終わりではなく、運用状況を定期的に振り返り、改善を重ねていく必要があります。従業員からフィードバックを集め、使いにくい点や非効率な部分があればルールやシステムを見直しましょう。
業務内容や組織体制の変化に応じて柔軟に対応することで、ペーパーレス化の効果を高められます。
ペーパーレス化の成功事例
実際にペーパーレス化に取り組んだ企業からは、業務時間の短縮やコスト削減などの具体的な成果が報告されています。以下では、導入によって成功を収めた2社の事例を紹介します。
NECネッツエスアイ・サービス:ERPシステムとの連携で発注業務を効率化
NECネッツエスアイ・サービス株式会社は、新しい基幹システムの導入にあわせてBtoBプラットフォームとのAPI連携を実施しました。これにより手作業でのデータ入力が不要になり、リアルタイムでの発注処理が可能になりました。
また、発注書から納品書までを電子データで扱う体制へ切り替えた結果、郵送作業とそれに伴う費用をほぼゼロに近付けることに成功しています。
9種類の契約書を電子化したことで、生産部では年間600時間、資材グループでは年間160時間の作業時間削減を達成しました。収入印紙代や郵送代も不要になり、取引先からも好評を得ています※。
※出典:Infomart「ERPシステムとのAPI連携で、入力作業が不要に。ペーパーレス化と、発注のリアルタイム処理が実現。」
GAテクノロジーズグループ:法改正を契機にオンライン取引を推進
GAテクノロジーズグループは、2022年の改正宅地建物取引業法の施行をきっかけに、不動産取引のオンライン化を加速させました。自社サービスの「RENOSY」や「ITANDI」を通じて、業界全体のDX推進にも貢献しています。
2023年4月から2024年3月までの1年間で、グループ全体で1,499万枚の紙削減を達成しました。前年比で約27%増という成果を記録し、環境への配慮と効率的な業務運営の両立を実現しています。
また、不動産業界での取り組みを起点に、他の領域でもテクノロジーを活用した課題解決を進めています※。
※出典:GA technologies group 公式note「不動産DXによるペーパーレス化で1,499万枚の紙の削減を達成」
ペーパーレス化を進めてデジタル時代に対応できる組織を目指そう
ペーパーレス化は、紙の書類を電子データへ置き換えることで業務効率化やコスト削減を実現する取り組みです。働き方改革の推進や法改正への対応などの社会環境の変化を背景に、導入を進める企業は増え続けています。
初期投資の負担やITリテラシーの差など乗り越えるべき課題はあるものの、目的を明確にして段階的に取り組めば成功の確率は高まります。すでに導入を終えた企業では、業務時間の大幅な短縮や環境負荷の軽減などの成果が報告されています。
デジタル時代に対応できる組織作りに向けて、自社の状況にあった方法でペーパーレス化を推進しましょう。
■監修者情報
持木 健太(もちきけんた)
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 中小企業診断士
DX推進の総責任者として、テレワーク環境構築・ペーパーレス化・電子帳簿保存法対応・ビジネスモデルの再構築などで活躍中。企業の労働生産性向上や付加価値向上を目指して、中小企業から上場企業まで幅広く対応している。
HP: https://toma.co.jp/
