ワークライフバランスとは?
意味やメリット・企業の取り組み事例を紹介
ワークライフバランスとは?
意味やメリット・
企業の取り組み事例を紹介
ワークライフバランスの重要性が高まるなか、働きやすい環境づくりが企業の成長を左右する時代となっています。長時間労働の是正や柔軟な働き方の導入は、従業員の満足度や生産性の向上にもつながる大事な要素です。
しかし、具体的にどのような施策を取り入れるべきか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。本記事では、ワークライフバランスの基本やメリット・デメリット、企業の取り組み事例をご紹介します。働き方改革を進める第一歩として、ぜひ参考にしてください。
ワークライフバランスとは?
ワークライフバランスとは、仕事(ワーク)と私生活(ライフ)のバランスをとりながら、どちらも充実させる考え方です。働く人々が仕事上の役割や責任を果たし企業に貢献しつつ、家庭生活や地域活動、自己啓発の時間を確保できる社会が理想とされています。
単に労働時間を短縮するだけではなく、性別や年齢を問わず、多様な働き方や生き方を選択できる仕組みを整えることも重要です。この考え方は、企業の生産性向上や人材確保、従業員の健康維持にもつながるため、近年、多くの企業や政府が推進に取り組んでいます。
ワークライフインテグレーションとの違い
ワークライフインテグレーションとは、仕事と生活を完全に分離するのではなく、両者の境界を曖昧にして統合しながら相乗効果を生み出し、調和を図る考え方をさします。
ワークライフバランスが「仕事と生活を両立させる」ことに重点を置くのに対し、ワークライフインテグレーションは「仕事と生活を柔軟に組み合わせる」ことを目標としていることが大きな違いです。
この概念では、労働時間の短縮よりも、働き方と個人の生活を流動的に運営し、生産性向上と生活の質向上の両立を重視しています。例えば、テレワークを活用して子育てと仕事を両立させたり、ライフステージに応じて仕事の重点を変えたりする取り組みが該当します。
ただし、ワークとライフの境目が曖昧になることで、常に仕事をしている状態に陥るリスクも指摘されています。また、成果が個人の自己管理能力に大きく依存しやすい点も課題のひとつです。
ワークライフバランスを保つ必要性
ワークライフバランスを保つことは、個人の健康や生活の充実だけでなく、企業の成長にも大きな影響を与えます。長時間労働が続くと、従業員の心身に過度な負担がかかり、健康へのリスクが高まることは明らかです。
また、仕事と家庭の両立が困難になることで、少子化や労働力人口の減少など、社会全体にも悪影響を及ぼす可能性があります。適切なワークライフバランスを確保できれば、従業員のモチベーションが向上し、生産性の向上や企業の競争力強化につながるでしょう。
このような背景から、多くの企業が働き方改革を推進し、労働時間の適正化や柔軟な働き方の導入に積極的に取り組んでいます。
「ワークライフバランス憲章」の内容や目的
ワークライフバランス憲章は、働く人々がやりがいや充実感を持ちながら働きつつ、家庭や地域での生活も大切にできる社会の実現を目指して制定されました。現代の日本では、経済環境や雇用環境の変化により、仕事と生活の両立が困難な状況です。
ワークライフバランス憲章は、全ての人が健康で豊かな生活を送りながら、経済的自立を確保できる社会を作るための指針となっています。具体的には、長時間労働の抑制、育児や介護と仕事の両立支援、柔軟な働き方の普及などが盛り込まれています。
ワークライフバランスの推進では、企業や労働者だけでなく、政府や地方自治体がそれぞれの立場で責任を持ち、仕事と生活の調和を積極的に推進することが不可欠です。
ワークライフバランスを重視するメリット・デメリット
ワークライフバランスを
重視するメリット・デメリット
ワークライフバランスを意識することで、働く人の生活の質が向上し、企業や社会全体にも良い影響をもたらします。
一方で、適切に運用しないと、かえって業務効率の低下や負担の偏りなどの問題が生じる可能性があるため、メリット・デメリットをそれぞれ把握しておくことが重要です。
メリット
ワークライフバランスの推進により、従業員のモチベーション向上や企業の成長が期待できます。適切な休息をとることで集中力が高まり、生産性の向上にもつながるでしょう。
また、ワークライフバランスを重視する企業は、求職者からの関心を集めやすく、優秀な人材を確保しやすくなる点もメリットです。働きやすい環境を整えれば、離職率の低下や採用コストの削減が期待されます。
柔軟な働き方を導入すると、多様な人材が活躍しやすくなり、企業の競争力向上にも貢献します。従業員の満足度が高まれば、結果として企業イメージやブランド価値もさらに高まるでしょう。
デメリット
ワークライフバランスを意識しすぎると、仕事と生活の境界を明確にすることになるため、業務に柔軟さを発揮しづらくなる可能性があります。テレワークやフレックスタイムを導入すると、労働時間の管理が難しくなり、成果が見えにくくなることも難点です。
また、柔軟な働き方が求められる一方で、業務の割り振りによっては特定の従業員に負担が偏るリスクがあります。企業の文化や風土によっては、ワークライフバランスの考え方が浸透しにくく、制度が形骸化する事態に陥りかねません。
さらに、自己管理能力が求められるため、従業員が時間や業務の量をコントロールできないと、かえって生産性が低下することも考えられます。従業員間の不公平感や経営陣の理解を得ることの困難さなど、様々な課題があることを認識しておくことが大切です。
企業が取り組むべきワークライフバランス施策
企業が取り組むべき
ワークライフバランス施策
企業がワークライフバランスを実現するためには、働き方の見直しと環境整備が欠かせません。
特に、育児や介護をしながら働く従業員が安心して仕事を続けられる仕組みづくりが重要です。例えば、育児短時間勤務制度を導入したり、子どもの学校行事に参加しやすいように特別休暇を設けたりすることで、家庭との両立を支援できます。
また、長時間労働を抑えるための取り組みも必要です。ノー残業デーの設定や、一定時間を超えた残業に対する上長の承認制を導入すれば、過剰な労働による従業員への負担を軽減できます。
さらに、柔軟な働き方を取り入れることも効果的な施策です。フレックスタイムやテレワークを活用することで、働く時間や場所の選択肢が増え、仕事と生活のバランスを両立しやすくなります。
これらの施策を導入し、定期的に見直すことで、従業員が働きやすい環境が整い、企業の生産性向上にもつながるでしょう。
ワークライフバランスの推進事例
以下では、実際にワークライフバランスを推進して効果が現れた事例を紹介します。
情報サービス業の事例
SCSK株式会社では、IT業界特有の長時間労働が常態化し、従業員の疲労が課題となっていました。
2011年の合併を機に、当時の社長が労働環境の改善を経営の重要課題と位置付け、「健康キャンペーン」を実施して働き方の見直しを進めています。翌年には「残業半減運動」を展開し、有給休暇の取得率向上にも注力しました。
2013年度からは「スマートワーク・チャレンジ20」を導入し、有給休暇の完全取得と月間残業時間20時間以下を目標に設定しました。目標を達成した部門には特別賞与を加えるなど、働き方改革にインセンティブを導入しています。
2014年には、長時間労働を抑制するためのルールを強化し、月80時間以上の残業を社長の承認制に変更しました。また、有給休暇の取得促進策として「一斉年休取得日」を設け、取引先にも周知する仕組みを整えています。
これらの取り組みにより、残業時間が減少し、有給休暇の取得率が向上しました。業務効率も改善され、企業としての成長を維持しながら、より働きやすい環境が実現しています。
建設工事業の事例
茅沼建設工業株式会社は、建設業の長時間労働を課題とし、労働基準監督署と連携して労働条件の改善に取り組みました。平成18年には「育児・介護休業に関する規程」を制定し、育児や介護をしながら働ける環境を整えています。
しかし、長時間労働があたり前の社風があり、労働時間の管理や休暇取得の意識を浸透させるのは難しい状況でした。そこで、担当部長が上層部に必要性を丁寧に説明し、社内環境の整備を進めています。
具体的には、育児看護特別休暇や家庭教育サポート特別休暇(有給)を導入し、育児短時間勤務制度の対象を小学校6年生まで拡大しました。また、冬期の除雪作業が繁忙期のため、他の工事と重ならないよう調整するなどの工夫も見られます。
社長も勉強会に参加し、管理職が率先して早く帰るなど、社内全体で意識改革を推進しました。その結果、企業表彰の受賞やメディア掲載があり、従業員の意識も向上しました。さらに、地域の体験学習やイベントに積極的に協力し、社会貢献面での評価も高まっています。
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DX推進、AI・RPAツール、オフィス改革など、様々なサービスが紹介されるため、経営戦略に活かせる知見が広がるでしょう。最新の働き方を把握し、自社のワークライフバランスを向上させる絶好の機会です。
また、業務改善ソリューションを提供している企業は、出展側としての参加も可能です。自社サービスの認知度向上や新規リードの獲得の場として気軽にご利用ください。
ワークライフバランスを見直して
自社の働き方改革を進めよう
ワークライフバランスの向上は、従業員の満足度や生産性を高め、企業の成長にもつながる大事な要素です。長時間労働の是正や柔軟な勤務制度の導入など、まずは自社の課題を見直し、実行できる施策からはじめましょう。
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■監修者情報
羽場 康高(はば やすたか)
社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
HP:https://www.lifestaff.net/