リーガルテックとは?
種類や導入のメリット・デメリット、
選定時のポイントを解説
リーガルテックとは?
種類や導入のメリット・デメリット、選定時のポイントを解説
契約書の作成や管理、法律調査など、法務業務には多くの時間と労力がかかります。こうした課題を解決する手段として、近年「リーガルテック」を導入する企業が増えています。
本記事では、リーガルテックが注目される背景や導入のメリット、主な種類、選定時のポイントを詳しく解説します。法務業務のデジタル化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
リーガルテックとは
リーガルテック(LegalTech)は、法律(Legal)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。具体的には、法律業務にテクノロジーを導入し、効率化や高度化を図るツール・サービスの総称をさします。
もともとは米国の訴訟実務における膨大な資料処理の負担を軽減する目的で誕生し、2000年代以降のインターネット環境の普及にともない世界各国へ広まりました。
現在では、電子署名による契約締結やAIによる契約書チェック、クラウド型の文書管理など、幅広いサービスが提供されています。
日本国内でリーガルテックが注目を集める背景
日本国内でリーガルテックが注目を集めるようになった背景には、働き方改革やコロナ禍による業務環境の変化が関係しています。従来は紙媒体への署名捺印を前提とした契約や申請が一般的でしたが、リモートワークの普及により法律業務のデジタル化が急務となりました。
また、少子高齢化に伴う人手不足が深刻化するなかで、限られたリソースで生産性を維持・向上させる手段として、ITやAIの活用が求められています。
さらに、企業のグローバル展開が進む現在、迅速かつコスト効率の高い法務対応が必要とされる場面も増えており、その対応手段としてリーガルテックの導入が加速しています。
深刻化する人手不足の原因と影響についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
リーガルテックの市場規模
リーガルテック市場は日本国内のみならず、世界的にも拡大を続けています。国内では電子契約サービスの普及が著しく、リモートワークの定着や行政のデジタル化推進が市場成長を後押ししています。
一方、海外では北米を中心に早くから市場が形成されてきました。訴訟件数の多い米国では業務効率化の必要性が高く、他国よりもリーガルテックの導入が進んでいます。
近年は大手IT企業の参入やスタートアップへの投資が活発化しており、市場の成長も続いています。
リーガルテックの主な種類
リーガルテックには、法律業務の各段階を支援する様々なサービスが存在します。以下では、代表的な6つのサービスの特徴を詳しく解説します。
- 電子契約サービス
- 契約書レビュー・審査サービス
- 契約書・文書管理サービス
- 法律情報検索サービス
- 登記・申請手続き支援サービス
- 紛争・訴訟対応サービス
電子契約サービス
紙の契約書と押印による手続きに代わり、契約の締結をインターネット上で完結させる仕組みが電子契約サービスです。電子署名やタイムスタンプによって法的効力を確保しつつ、契約書の作成・締結・保管までをクラウド上で一元管理できます。
印紙税や郵送費の負担を軽減できるほか、遠隔地との取引も迅速に行えるため、営業の非対面化やペーパーレス化を後押しします。
契約書レビュー・審査サービス
契約書レビュー・審査サービスは、AIを活用して契約内容を自動でチェックするサービスです。契約書ファイルをアップロードするだけで、自社に不利な条項や欠落項目、法的リスクを瞬時に洗い出し、具体的な修正案を提示します。
法務担当者が手作業で行っていたレビュー業務を効率化できるため、人的コストと作業時間の削減につながります。ただし、複雑な契約や非定型的な内容には対応しきれない場合もあるため、最終的な確認には人の目による判断が必要です。
契約書・文書管理サービス
契約書・文書管理サービスは、契約書や請求書などの法的文書をデータ化し、クラウド上で一括管理できるサービスです。キーワードや取引先指定の検索、全文検索などの機能を活用することで、必要な書類を迅速に見つけられます。
物理的な書類保管スペースを確保する必要がなくなり、紛失リスクも大幅に軽減されます。また、修正履歴やバージョン管理機能を備えたサービスもあり、文書の変更経緯を追跡しやすい点も強みです。
法律情報検索サービス
法律情報検索サービスは、膨大な法令や判例データベースをAIで高速検索できるサービスです。従来のように紙の専門書や資料を手作業で調べる必要はなく、キーワードを入力するだけで関連する条文や判例を簡単に見つけられます。
さらに、複数キーワードを組み合わせた詳細検索や、類似判例の自動抽出などの機能を活用することで、調査の精度と効率を大幅に向上させることが可能です。
登記・申請手続き支援サービス
登記・申請手続き支援サービスは、登記申請や商標登録、各種許認可の申請などをオンラインで効率的に行えるサービスです。申請書類の自動作成やテンプレート機能により、専門知識がなくても自社内で手続きを進めやすくなります。
また、定期的に発生する登記変更や更新手続きを迅速に処理できるため、専門家への外注コストを抑えることも可能です。一方で、非定型的な申請や事前調査が必要な場合には、引き続き専門家の支援が求められるケースもあります。
紛争・訴訟対応サービス
紛争・訴訟対応サービスは、法的トラブルが生じた際に、弁護士への相談や専門家の紹介、解決に向けたサポートをオンラインで受けられるサービスです。希望の分野・地域・予算などの条件を指定して弁護士を検索でき、複数の専門家から見積もりを取得することも可能です。
一部のサービスでは、初期相談から和解交渉までを非対面で進めることができ、時間や場所の制約を受けずに問題解決を図れます。訴訟に至る前の段階で迅速に助言を得られれば、トラブルの早期解決やリスクの最小化にもつながります。
リーガルテックを導入するメリット
リーガルテックの導入で企業が得られるメリットは以下の4点です。
- 業務効率化と生産性向上につながる
- 業務の属人化を防いで品質を平準化できる
- コストを削減できる
- 情報を一元化して戦略的に活用できる
それぞれ詳しく解説します。
業務効率化と生産性向上につながる
テクノロジーの活用により、従来は人の手で長時間かけていた法律業務を大幅に短縮できます。AIによる契約書チェックを用いれば、弁護士が数時間かけて行っていたレビューも数分で完了し、法務担当者はより高度な判断や戦略業務に注力できるようになります。
さらに、電子契約サービスを活用すれば契約締結までのリードタイムを短縮できるため、業務の迅速化や残業時間の削減、リモートワーク環境の整備にも貢献します。
生産性向上に取り組むメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
業務の属人化を防いで品質を平準化できる
法律業務は担当者の知識や経験に左右されやすく、品質にばらつきが生じやすい領域です。リーガルテックの導入により、誰が対応しても一定の品質を担保できる業務フローを構築できます。
AIツールは常に一定の基準で処理を行うため、ヒューマンエラーのリスクも軽減されます。また、人事異動や担当者の不在時でも円滑に業務を継続できる点もメリットです。
コストを削減できる
電子契約や文書のデジタル化を進めることで、印紙税・郵送費・紙代・印刷費など法律業務に関わるコストを削減できます。紙媒体での保管も不要になるため、書庫や倉庫などの物理的コストも抑えられます。
作業時間の短縮によって残業が減れば、人的コストを見直すことも可能です。さらに、契約書レビューや申請支援サービスの利用は、専門家への依頼費用の削減にもつながります。
情報を一元化して戦略的に活用できる
契約書や法律文書をクラウド上で一元管理することで、膨大なデータから必要な情報に即座にアクセスできるようになります。紙の契約書や部門ごとに分散していた情報が統合されるため、過去の事例や条項を参照する手間を省ける点も魅力です。
また、蓄積された契約データを分析すれば、取引先ごとの契約傾向や自社に不利な条項の頻度を把握でき、今後の交渉戦略や契約方針の改善にも役立ちます。
リーガルテックを導入するデメリット
リーガルテックは多くのメリットをもたらす一方で、以下のようなデメリットやリスクも存在します。
- 導入・運用コストがかかる
- 取引先の理解と協力が必要
- セキュリティ対策が求められる
それぞれの対策も含めて詳しく解説します。
導入・運用コストがかかる
リーガルテックの導入には、ライセンス費用・システム構築費・既存データの移行費用などの初期投資が必要です。また、導入後も保守管理費用やバージョンアップ費用、カスタマイズ費用などのランニングコストが発生します。
従業員への操作教育やマニュアル整備にも時間と費用がかかるため、導入前に総コストと運用効果のバランスを試算しましょう。
取引先の理解と協力が必要
電子契約サービスを導入しても、取引先が対応していなければ実務で活用できません。特に中小企業や旧来の商習慣を重視する業界では、デジタル化が進んでいないケースも多いため、事前の確認と調整が不可欠です。
また、法令上の制約にも注意が必要です。例えば、事業用定期借地契約や宅地建物取引に関する一部の書類は、法令や実務上の運用により、電子化が制限される場合があります。
導入前に自社で扱う契約類型が電子契約に対応可能かどうかを確認しておきましょう。
セキュリティ対策が求められる
リーガルテックでは、契約書や顧客情報などの重要なデータをクラウド上で管理するため、セキュリティ対策が極めて重要です。データ暗号化やアクセス制御が不十分だと、情報漏洩のリスクが高まり、企業の信用失墜につながりかねません。
さらに、サーバートラブルや通信障害が起きれば、業務そのものが停止するおそれもあります。これらのリスクを防ぐため、認証制度を取得したサービスを選び、バックアップ体制や緊急時の復旧計画を整備しましょう。
リーガルテック導入のポイント
リーガルテックを導入する上で重要なポイントは以下のとおりです。
- 導入目的と解決したい課題を明確にする
- 自社の業務要件に合ったサービスを選定する
- トライアル期間を活用して検証する
- 段階的に導入範囲を拡大する
- 他社の導入事例を参考にする
それぞれ順番に見ていきましょう。
導入目的と解決したい課題を明確にする
リーガルテックを導入する上で最も重要なのは、自社が抱える課題と導入目的を明確にすることです。目的が曖昧なまま導入してしまうと、費用と時間をかけたにもかかわらず、期待した効果が得られない可能性があります。
まずは現状の業務フローを可視化してボトルネックを洗い出し、どの程度の時間短縮やコスト削減が実現できるかを試算しましょう。具体的な数値目標があれば、導入後の効果測定もスムーズに行えます。
自社の業務要件に合ったサービスを選定する
リーガルテックサービスには様々な種類が存在するため、自社の業務内容や規模に適したサービスを選ばなければなりません。どの業務プロセスを効率化したいのかによって、選ぶべきツールは異なります。
自社業務の改善に必要な機能をリストアップし、既存システムとの連携性や操作性も含めて複数のサービスを比較検討しましょう。
トライアル期間を活用して検証する
多くのリーガルテックサービスでは無料トライアルが提供されています。本格導入前に必ず実際の業務で試用し、機能や操作性が自社の課題解決に適しているかどうかを検証しましょう。
特に重要なのは、実務担当者にも使ってもらい、現場の意見を集めることです。実務での使い勝手や改善点を把握しておくことで、スムーズな導入につながります。
段階的に導入範囲を拡大する
リーガルテックは一度に全社展開するのではなく、特定の部門や業務からスモールスタートすることを推奨します。まず効果が見えやすい領域で成功事例を作り、その実績をもとに徐々に適用範囲を広げていけば、現場の抵抗感も少なくなります。
導入後は効果を定期的に測定し、改善を重ねることが大切です。同時に業務フローの見直しも行うことで、導入効果を高められます。
他社の導入事例を参考にする
自社と業種や規模が近い企業の導入事例を調べると、導入後の変化をより具体的にイメージできます。リーガルテックサービスのWebサイトには導入事例が掲載されていることが多く、課題解決のヒントやサービスの活用例などを学べます。
他社の経験を自社の導入計画に活かすことで、導入失敗のリスクを減らすことが可能です。
リーガルテックを導入して法務部門の業務改革に取り組もう
リーガルテックとは、契約業務や法律調査などの法律業務にテクノロジーを活用し、効率化と高度化を実現するツール・サービスの総称です。
電子契約・AI契約書レビュー・文書管理システムなどの多様なサービスが登場しており、活用することで業務効率化やコスト削減、リスク管理の強化が期待できます。
導入を成功させるポイントは、自社の課題を明確にした上で業務要件に合ったサービスを選び、スモールスタートして段階的に展開していくことです。法務部門の生産性向上を目指すなら、リーガルテックの活用を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
■監修者情報
古関 俊祐(こせき しゅんすけ)
弁護士
弁護士法人HAL代表弁護士。消費者金融、銀行ローン各社との債務整理、過払金請求事件を多数取り扱い、多くの依頼者からの相談を受けています。分かりやすく、人当たりの良い弁護士になることを目標に、日々の業務を行っています。債務整理案件だけでなく、保険や不動産など財産にまつわる問題、離婚や相続など家庭内の問題など、個人の生活において避けては通れない様々な問題について手広く対応しています。地元である東京都葛飾区の新小岩にて新小岩法律事務所を開設後、弁護士法人HALを設立し秋葉原と新小岩にオフィスを構えて活動しています。好きな言葉は明朗会計。趣味は、プロ野球観戦でシーズン中はしょっちゅう横浜スタジアムに足を運んでいます。
