働き方改革とは?
取り組みの基本や具体的な実施方法・成功事例まで
わかりやすく解説

働き方改革とは?
取り組みの基本や具体的な実施方法・
成功事例までわかりやすく解説

少子高齢化や労働人口の減少が進むなか、企業に求められているのが「働き方改革」です。従業員一人ひとりが自分らしく働けるよう、柔軟な働き方を実現するための取り組みが全国で進められています。

本記事では、働き方改革の基本的な考え方から具体的な実施方法、実際の成功事例までわかりやすく解説します。自社での働き方改革を検討されている方や、すでに取り組みをはじめているものの成果を出せていない方は、ぜひ参考にしてください。

 

働き方改革とは?

働き方改革とは、労働環境を改善し、多様な働き方を可能にするための取り組みです。この背景には、少子高齢化による生産年齢人口の減少や、労働者のワークライフバランスに対するニーズの多様化が関係しています。

政府は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」を制定し、時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金の実現などを進めています。柔軟な働き方の推進や公平な待遇の確保、長時間労働の是正などが労働政策の基本方針です。

働き方改革を通じて、労働者一人ひとりが意欲と能力を最大限に発揮できる社会の実現を目指しています。

 

働き方改革の背景

日本では1995年の8,716万人をピークに生産年齢人口が減少し続けており、2020年には7,509万人まで減少しました。将来推計によれば、2030年には約6,875万人、2050年には5,275万人にまで減少すると予測されています

人口減少に伴い労働力不足が深刻化し、特に建設業や運輸業などでは高齢化による担い手不足が大きな問題となっています。また、働き手不足による労働時間の減少は実質GDP(国内総生産)の押し下げ要因となることから、企業にとって生産性向上は不可欠です。

現代の働く人々のニーズも多様化しており、育児や介護と仕事を両立できる柔軟な働き方が求められています。こうした社会状況を受け、日本政府は「働き方改革実行計画」を策定し、労働環境の改善に向けた具体的な取り組みを積極的に推進しています。

※出典:総務省「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」

 

働き方改革に関連する法律

「働き方改革関連法」は、日本の労働環境の改善と多様な働き方の実現を主要な目的として、2019年4月1日から段階的に施行されました。

働き方改革関連法の主な内容として、まず企業に対する時間外労働の上限規制が導入され、原則として月45時間・年360時間が上限と明確に定められました。

繁忙期など特別な事情がある場合でも、年間720時間以内、休日労働を含めた複数月平均80時間以内、単月100時間未満とする厳しい制限が企業に課されています。これらの規制に違反した企業には、罰則が適用されます。

また、「年次有給休暇の取得義務化」も行われ、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対しては、企業側が毎年最低5日を確実に取得させることが義務付けられました。

さらに、雇用形態に関係なく公平な待遇を確保するため、正社員と非正規雇用労働者(パートタイマーや契約社員など)の間で職務内容や配置の変更範囲が同じでありながら、基本給や賞与などの待遇に不合理な差を設けることも禁止されました。

 

働き方改革が必要な理由

働き方改革は、日本の労働環境と経済の持続可能性を確保するために必要不可欠な取り組みです。以下では、その主な理由を詳しく解説します。

 

労働人口の確保と生産性向上のため

日本の労働人口は減少傾向にあり、特に若年層の割合が低下していることが経済成長の課題となっています。一方、2023年の高齢者の就業者数は914万人と過去最高の水準に達し、65歳以上の労働力が日本経済で重要な役割を果たしています

労働投入量の減少が経済に与える影響は大きく、GDPの維持・成長には時間あたりの労働生産性の向上が不可欠です。そのため、政府は生産性向上を目的とした支援策を実施し、企業にもその取り組みを強く促しています。

具体的には、労働時間の短縮と生産性向上を両立するため、新技術の導入や業務プロセスの効率化が推奨されています。

※出典:国土交通省「国土交通白書 2024 第1節 本格化する少子高齢化・人口減少における課題」

 

多様な働き方に対応するため

多様な働き方を実現するため、テレワークやフレックスタイム制、副業・兼業の推進が進められています。特にテレワークの導入支援やモデル就業規則の整備により、多くの企業が柔軟な労働環境を提供しやすい状況となりました。

また、育児や介護との両立を支援するため、子育てや介護と仕事を両立しやすい制度の拡充が求められています。さらに、外国人材や障がい者、高齢者の活躍を促進し、多様な人材を活用する動きも強まっています。

これらの取り組みにより、より多くの人々が自分にあった働き方を選択できる環境が整備されつつあるのが現状です。

 

働き方改革を進める上での2つの課題

働き方改革を進める上で課題となるのは、以下の2つです。

 ●  長時間労働の是正
 ●  雇用形態による待遇格差

それぞれどのような問題なのか詳しく見ていきましょう。

 

長時間労働の是正

日本社会では長時間労働が常態化し、労働者の健康被害や企業の生産性低下が問題視されています。特に過労による人材の離職リスクは高く、企業の持続的成長にも悪影響を及ぼしていることが課題です。

日本政府は長時間労働の是正策として、時間外労働の上限規制強化に加え、勤務間インターバル制度の導入を推奨し、労働者の十分な休息時間の確保を支援しています。また、各企業には業務効率化のためのIT技術活用や、業務フローの見直しが求められています。

しかし、単に労働時間を削減するだけでは業務の負担増加につながる恐れがあるため、組織全体での包括的な働き方改革が不可欠です。企業は業務プロセスの改善と生産性向上を同時に進め、持続可能な労働環境を構築する必要があります。

 

雇用形態による待遇格差

日本の労働市場では、正規雇用と非正規雇用の待遇格差が大きな課題となっており、特に基本給や各種手当、福利厚生の面で顕著な違いが見られます。非正規労働者が正社員と同じ業務を担っていても、不利な立場に置かれることが多いのが実情です。

現在、多くの企業では待遇格差を是正するため、スキルや貢献度に応じた公平な評価制度の導入や、非正規雇用者に対する正社員登用の機会を設ける動きを進めています。しかし、是正に伴うコスト増を懸念する企業も多く、対応が遅れているケースも少なくありません。

今後の日本社会では、公平な待遇を確保しつつも、企業の持続可能性を維持するための仕組みづくりが求められています。

 

働き方改革の実施方法

働き方改革を効果的に実施するには、以下の順で取り組むことが重要です。

①  現状分析と課題の把握
②  目標設定と計画策定
③  仕組みの見直し
④  トライアル導入と効果測定
⑤  社員への周知と意識改革

 

①  現状分析と課題の把握

まず第一歩として、労働時間や業務効率、雇用形態の実態をデータで正確に把握し、会社が抱える課題を明確にすることが大切です。社員へのヒアリングやアンケートを実施して、現場の声を集め、働き方の問題点を可視化する取り組みを行いましょう。

業務フローや労働環境の改善が求められる領域を洗い出し、具体的な対策を検討することが改革の基盤となります。

 

②  目標設定と計画策定

企業の課題に応じた働き方改革の目標を設定し、具体的な実施計画を策定します。長時間労働の削減目標を数値化したり、テレワークの導入率を設定したり、評価制度の見直しスケジュールを立てるなど、実現可能な施策を段階的に組み込んでいきましょう。

また、これらの計画を進める上では、経営層の理解と支援を得ることも必要ですが、社員を巻き込むためには経営側の判断だけでなく、社員のメリットを明らかにすることが不可欠です。経営陣が長期的な視野を持って各職場に実行の責任を持たせた環境改善に取り組むことで、全社的な改革として定着しやすくなるでしょう。

 

③  仕組みの見直し

目標達成のため、以下のような具体的な施策を検討・実施します。

 ●  育児休暇取得促進
 ●  長時間労働削減
 ●  テレワーク導入
 ●  短時間勤務制度化
 ●  賃金引き上げ

これらの施策に応じて、社内の制度やルールを整備し、必要に応じて就業規則に反映させることで、改革を形にしていきます。

 

④  トライアル導入と効果測定

いきなり全社的に改革を進めるのではなく、一部の部署やグループで試験運用を行い、効果を検証しましょう。試行結果をもとに改善点を洗い出し、必要に応じて施策を修正することで、より効果的な働き方改革を実現できます。

 

⑤  社員への周知と意識改革

いくら優れた制度を導入しても、社員の理解と協力が不足すると定着しない可能性があります。説明会や研修を実施し、働き方改革の目的やメリットを丁寧に伝え、組織全体の意識改革を促しましょう。

特に経営層から定期的な効果検証の結果やPDCAサイクルによる長期的な改善活動方針のメッセージ発信を強化し、全社員が自ら進んで取り組める環境を整えることが、働き方改革成功の鍵です。改革は一朝一夕に実現するものではなく、継続的な取り組みによって会社の文化として根付いていきます。

 

働き方改革の成功事例

以下では、日本企業の働き方改革の成功事例を2件ご紹介します。

 

物流業の取り組み

株式会社友和物流は2024年問題に対応するため、ドライバーの労働環境改善と業務効率化に取り組んでいます。

2024年問題とは、働き方改革法案によって、ドライバーの時間外労働時間の上限規制が2024年4月以降に適用されたことで発生する様々な問題のことをいいます。

特に課題となっていた荷待ち時間の削減に向けて、詳細なデータ収集を行い、荷主との丁寧な交渉を重ねた結果、徐々に状況が改善されてきました。

また、高齢ドライバーの健康管理を徹底するため、脳ドッグやロックスインデックス検査を導入しました。若年層の採用促進策としては、従業員紹介制度(リファラル採用)を活用し、若手ドライバーの確保に力を入れています。

さらに、最新型のデジタルタコグラフ(運行記録計)を導入し、長時間労働防止のためのアラート機能を設定しています。今後はAI点呼機器や新しい勤怠管理システムの導入も計画されており、テクノロジーを活用した働き方改革が一層進む見込みです。

 

建設業の取り組み

有限会社タムカンパニーは、ITを活用した業務の効率化と有給休暇の取得促進を目的に働き方改革を積極的に推進しています。

同社がまず取り組んだのは、管理業務の効率化を目的としたクラウド型給与計算システムの導入です。この取り組みにより、給与計算にかかる時間を大幅に削減でき、給与明細の配布もネット上で完結できるようになりました。

従業員はスマートフォンで給与明細や源泉徴収票を簡単に確認できるため、利便性が向上しました。

また、勤怠管理のデジタル化も着実に進められています。これまで使用していたタイムカードや紙の出勤簿を廃止し、リアルタイムで全従業員の勤務状況を把握できるシステムを新たに導入しました。

この取り組みは単なる業務効率化だけでなく、シフト管理の最適化や有給休暇の取得促進にもつながっており、従業員の働きやすさ向上に貢献しています。

 

「働き方改革 EXPO」で業務効率化の
ヒントを見つけよう

「働き方改革 EXPO」で
業務効率化の
ヒントを見つけよう

業務の効率化やDX推進を検討しているなら、ぜひ「総務・人事・経理 Week」に足を運んでみてください。この展示会内で開催される「働き方改革 EXPO」は、働き方改革や業務改善を目的としたBtoB向けの専門展示会です。

会場では最新のDXツールやAI・RPA、ペーパーレス化ソリューションなど、業務効率化に役立つ製品やサービスが一堂に集結しており、情報収集や具体的な商談の場として活用できます。

複数の専門展示会が同時開催されるため、総務・人事・経理に関わる幅広い課題を一度に解決するチャンスです。

展示会場内は「DX推進支援」「オフィス改革」「社内コミュニケーション」などを実現する製品やサービスを見ることができ、目的に応じた情報を収集できます。事前に来場登録をすれば無料で入場できるため、業務効率化の最新トレンドを学ぶ機会として活用してみてはいかがでしょうか。

また、業務改善ソリューションを提供している企業は、出展側としての参加も可能です。自社サービスの認知度向上や新規リードの獲得、商談の場として気軽にご利用ください。

働き方改革EXPO

(生成AI・DXなど業務改革のための展示会)

【開催スケジュール】

■【東京】総務・人事・経理Week
2025年6月25日(水)~27日(金) 東京ビッグサイト

■【名古屋】総務・人事・経理Week
2025年7月23日(水)~25日(金) ポートメッセなごや

■【東京】総務・人事・経理Week
2025年9月10日(水)~12日(金) 幕張メッセ

■【関西】総務・人事・経理Week
2025年11月19日(水)~21日(金) インテックス大阪
 

働き方改革を実践して企業の成長につなげよう

働き方改革は、長時間労働の是正や雇用形態による待遇格差の解消、多様な働き方の実現を目的とした重要な取り組みです。企業は現状分析を行い、ITツールの活用や制度の見直しを通じて、労働環境の改善と生産性向上を両立させることが求められています。

最新の業務効率化ソリューションを知りたい方は、「働き方改革 EXPO」への参加がおすすめです。多くの専門企業が出展するこの展示会では、自社の課題解決に役立つ製品やサービスと出会える可能性があります。

ぜひ来場・出展を検討し、自社に最適な働き方改革のヒントを見つけましょう。

「働き方改革 EXPO」詳細はこちら


■監修者情報

羽場 康高(はば やすたか)
社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

HP:https://www.lifestaff.net/