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コンプライアンス管理とは?
重要視される理由や具体的な進め方、過去の違反事例を解説

更新日:2026年2月20日

企業が持続的に成長するためには、利益の追求だけでなく、法令や社会的規範を守る「コンプライアンス」への意識が不可欠です。近年は社会的責任やガバナンスの観点から企業活動に厳しい目が向けられており、コンプライアンス管理の必要性は一段と高まっています。

本記事では、コンプライアンス管理が重要視される理由や、違反が発覚した場合のリスク、コンプライアンス管理の進め方について詳しく解説します。実際に発生したコンプライアンス違反の事例も紹介しますので、自社で対策を検討する際の参考にしてください。
 

コンプライアンス管理とは

コンプライアンス管理とは、法令や社内規範、倫理観を守りながら事業活動を行うための仕組みや体制を整備し、運用する取り組みです。具体的には、リスクの把握や行動指針の策定、従業員への教育、監視体制の構築など、組織全体で継続的に取り組む活動をさします。

経営層から現場の従業員まで全員がコンプライアンス意識を持ち、日常業務のなかで実践する姿勢が求められます。
 

コンプライアンス管理が重要視される理由

社会でコンプライアンスが重要視されはじめた背景には、インターネットの浸透や法令の改正などが関係しています。

SNSの普及により、企業の不祥事は瞬時に拡散される時代となりました。一度の違反が企業の存続を脅かす事態に発展するケースも珍しくありません。情報の透明性が求められる現代において、コンプライアンス違反は社会的信用を失う致命的な要因となり得ます。

また、働き方改革関連法やハラスメント防止法の施行など、企業を取り巻く法規制は年々厳しさを増しています。こうした社会の変化に対応しながら健全な企業経営を実現するには、コンプライアンス管理の強化が不可欠です。
 

コンプライアンスの範囲

コンプライアンスの対象となる範囲は、以下の3つに分類されます。

  • 法令
  • 社内規範・業界ルール
  • 倫理観・モラル

3つの範囲を全て遵守することで、企業の健全性と社会的信用を維持できます。
 

法令

法令の遵守は、コンプライアンスの土台となる領域です。労働基準法や会社法、独占禁止法など、企業活動に関わる様々な法令を正しく理解し、日々の業務で守り続けなければなりません。

違反した場合は罰金や業務停止命令、刑事罰などの法的制裁を受けるおそれがあります。海外に事業を展開している企業では、進出先の国や地域ごとの法令にも対応する必要があり、より高度な管理体制が求められます。
 

社内規範・業界ルール

社内規範とは、就業規則や業務マニュアルなど、企業が独自に定めたルールをさします。法的な拘束力はないものの、業務の標準化や組織の秩序維持には欠かせない存在です。

また、業界団体が自主的に採択している基準や規制も対象に含まれます。電子機器業界の安全基準やIT業界のデータ保護基準など、各業界特有のルールを遵守することで、業界内での信頼性向上にもつながります。
 

倫理観・モラル

法律で明確に定められていない場合でも、社会通念上の企業倫理やモラルを守る姿勢は必要です。ハラスメント防止のための対策や社員教育の実施、法のグレーゾーンを突くような施策の回避など、企業として基本的な社会的責任を果たす必要があります。

倫理観に反する行為は、たとえ法令違反に該当しなくても、SNSなどで批判が広がり企業イメージを損なう原因となります。法令遵守に加えて倫理的な経営姿勢を示すことが、現代の企業には求められています。
 

コンプライアンス管理の進め方

コンプライアンス管理は一度に完璧な体制を目指すのではなく、自社の実情にあわせて着実にステップを踏んでいくことが大切です。以下では、実践に向けた6つのステップを詳しく解説します。

①     自社のリスクを洗い出し評価する
②     行動指針とガイドラインを整備する
③     推進体制と責任者を設ける
④     全社的な教育・研修を実施する
⑤     内部通報窓口を設ける
⑥     継続的なモニタリングと見直しを行う
 

①自社のリスクを洗い出し評価する

コンプライアンス管理の出発点は、自社の事業活動で発生しうるリスクを特定し、その重要度を評価する作業です。業種や事業内容によってリスクの種類は異なるため、経営層だけで判断せず現場の声も取り入れながら網羅的に洗い出しましょう。

リスクごとに発生確率と影響度を評価し、優先的に対応すべき課題を明確にすることで、限られたリソースを効率的に配分できます。
 

②行動指針とガイドラインを整備する

リスク評価の結果をもとに、従業員が判断に迷わず適切な行動を取れるよう、明確な行動指針やガイドラインを策定します。抽象的な表現にとどめず、具体的な事例や判断基準を盛り込むことで、現場での実効性が高まります。

整備したガイドラインは一度作って終わりではなく、法改正や社会情勢の変化に応じて定期的に見直しましょう。
 

③推進体制と責任者を設ける

コンプライアンス管理を全社的に推進するためには、専門の部署や責任者を設置することが望ましいです。各部門に担当者を配置すれば、組織全体への浸透がスムーズに進みます。

また、責任に応じた権限を与えておくことで、問題が発生した際の迅速な対応や継続的な改善活動が可能になるでしょう。
 

④全社的な教育・研修を実施する

ガイドラインを策定しても、従業員に理解されなければ効果は発揮されません。定期的な研修やeラーニングを通じて、コンプライアンスの重要性と具体的な行動指針を学ぶ機会を設けることが重要です。

階層別や部門別に内容をカスタマイズし、実務に即した事例を用いると、理解度と実践力の向上につながります。
 

⑤内部通報窓口を設ける

違反行為やその兆候を早期に発見するため、従業員が安心して相談・通報できる窓口を設置しましょう。匿名性を保証し、通報者が不利益を被らないよう保護する仕組みを整えることが重要です。

外部の専門機関に窓口を委託すれば、より中立的で相談しやすい環境を構築できます。
 

⑥継続的なモニタリングと見直しを行う

コンプライアンス管理は、一度実施すれば完了するものではありません。定期的な監査やチェックを通じて運用状況を確認し、課題があれば改善策を講じましょう。

従業員からのフィードバックや内部監査の結果を活用しながら、ルールや体制を柔軟に見直すことで、コンプライアンス管理の実効性を維持できます。
 

コンプライアンス違反が企業に与える影響

コンプライアンス違反による企業への打撃は大きく、一度の違反が事業の存続を脅かすおそれもあります。以下では、違反がもたらす具体的な影響を解説します。
 

社会的信用とブランド価値の失墜

コンプライアンス違反や、それを放置した事実などが発覚すると、顧客や取引先からの信頼は一気に失われる可能性があります。メディアやSNSで不祥事が拡散されれば、短期間で企業の評判が著しく低下する事態に陥るおそれがあります。

信用の回復には長い年月と多大なコストがかかります。取引停止や顧客離れが進めば売上は急激に減少し、優秀な人材の流出や新規採用の困難化など、企業の成長基盤が脅かされることにもなりかねません。
 

損害賠償請求や行政処分のリスク

コンプライアンス違反によって被害を受けた関係者から、多額の損害賠償を請求される可能性があります。特に法令違反の場合、内容によっては、業務停止命令や営業許可の取り消しといった重い行政処分を覚悟しなければなりません。

また、違反の内容が悪質であれば、経営者や担当者が刑事責任を問われ、罰金や拘禁刑が科されるリスクもあります。こうした法的制裁は企業経営に直接的な打撃を与え、最悪の場合は事業の存続そのものが危ぶまれる事態へと発展します。
 

過去のコンプライアンス違反事例

以下では、実際に起きたコンプライアンス違反の事例を紹介します。原因やリスクを分析した上で、自社のコンプライアンス管理に役立ててください。
 

不正会計による虚偽の財務情報開示

A社は2008年から2014年にかけて、不適切な会計処理により有価証券報告書等に虚偽の記載を行い、投資家に損害を与えました。段階的な調査の結果、過年度の修正額は最終的に2,000億円を超える規模に達し、企業の信頼性は大きく損なわれました。

損害を被った投資家から損害賠償を求める訴訟が37件提起され、東京地裁は企業に対して総額1億6,000万円余りの賠償を命じました。
 

委託先による大規模な個人情報漏えい

2014年、教育関連企業B社では、業務委託先の元社員が顧客情報を不正に取得し、約3,504万件の個人情報を名簿業者に売却する事件が発生しました。

漏えいした情報には氏名、性別、生年月日、住所、電話番号などが含まれており、顧客からの問合せで事態が発覚しました。

企業は緊急対策本部を設置して警察に刑事告訴を行い、容疑者は不正競争防止法違反の容疑で逮捕されました。経済産業省から勧告を受けた同社は、委託先も含めた個人情報保護の実施体制を明確化するなど、セキュリティ対策の抜本的な見直しを迫られました。
 

法務・コンプライアンスEXPO

【開催スケジュール】

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2026年6月17日(水)~19日(金) 東京ビッグサイト
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■【東京】総務・人事・経理Week[秋]
2026年9月16日(水)~18日(金) 東京ビッグサイト
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■【関西】総務・人事・経理Week
2026年11月18日(水)~20日(金) インテックス大阪
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■【名古屋】総務・人事・経理Week
2027年7月21日(水)~23日(金) ポートメッセなごや
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コンプライアンス管理を通じて企業の信頼性を高めよう

コンプライアンス管理とは、法令遵守にとどまらず、社会的規範や企業倫理を含む幅広いルールを守る体制を構築する取り組みです。違反が発覚すれば企業の信頼性は大きく損なわれ、事業継続が困難になるおそれがあります。

コンプライアンス管理の体制を整えることで、法的リスクの回避に加え、取引先や顧客からの信頼獲得、従業員の意識向上などの多くのメリットを得られます。企業の持続的成長と社会的信用の確保に向けて、自社に適したコンプライアンス管理の仕組みを築きましょう。


■監修者情報

大柴 良史(おおしば よしふみ)
社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

HP:https://aberiaconsul.com/