HRBPとは?
従来の人事との違いや求められるスキル、
導入の進め方、企業事例を解説

HRBPとは?
従来の人事との違いや求められるスキル、導入の進め方、企業事例を解説

人材不足や働き方の多様化が進むなか、従来の人事機能だけでは事業成長を支えきれない企業が増えています。そこで注目されているのが、経営戦略と人事戦略を結びつける新しい役割「HRBP(HRビジネスパートナー)」です。

本記事では、HRBPの役割や従来の人事との違い、導入が求められる背景、具体的な進め方までを詳しく解説します。さらに、実際にHRBPを導入して成果を上げている企業事例も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
 

HRBP(HRビジネスパートナー)とは

HRBP(Human Resource Business Partner)とは、経営層や事業部門と密接に連携し、ビジネス戦略の実現を人事面からサポートする役割をさします。

「HRビジネスパートナー」とも呼ばれ、従来の人事部門が担ってきたオペレーション中心の業務とは異なり、より戦略的な視点で人材を活用する点が特徴です。

単なる採用や労務管理にとどまらず、事業目標の達成に直結する人材戦略の立案・実行を行い、経営層と現場をつなぐ橋渡し役として組織課題の解決を推進します。
 

HRBPの役割・業務

HRBPの主な役割は以下の3つに分類されます。

  • 事業戦略と人事戦略の連携
  • 経営陣への人事視点での提言
  • 現場従業員の支援

具体的には、事業戦略を理解した上で必要な人材要件を定義し、採用計画の策定、組織設計、人材育成プログラムの企画・実行などを幅広く担当します。

また、経営会議への参加や事業部門責任者との定期的な対話を通じて組織課題を早期に把握し、迅速な解決策を提案することも重要な業務です。その他、従業員のキャリア相談や組織風土の改善、エンゲージメント向上施策なども担います。

従来の人事が「依頼を受けて実行する」受動的な立場であったのに対し、HRBPは自ら課題を発見し、能動的に解決策を示していく点に大きな違いがあります。
 

ウルリッチが提唱したHRBPの概念

HRBPという考え方は、1990年代に人事学者デイブ・ウルリッチが提唱した人事機能モデルに由来します。

ウルリッチは人事の役割を「戦略パートナー」「管理エキスパート」「従業員チャンピオン」「変革エージェント」の4つに分類し、そのうち「戦略パートナー」が現在のHRBPの原型となりました。

ウルリッチは、人事部門が単純な管理部門の立場から脱却し、事業戦略に積極的に関与する戦略的パートナーになるべきだと強調しました。この理論は人事のあり方に大きなパラダイムシフトをもたらし、世界的に広がりを見せています。

HRBPは日本企業でも導入が進んでおり、経営と人事を結びつける役割として重要視されています。ただ、日本企業では人事権限に制約があり、ジョブ型雇用も定着途上であることから、HRBPの役割が不明確になりやすく、導入のハードルとなる傾向があります。
 

従来の人事とHRBPの違い

従来の人事は、採用費や人件費の抑制、労務リスクの回避などの「コスト管理」の観点が強く、経営からは効率的に人を管理することが求められていました。これに対し、HRBPは人材を「投資対象」として捉え、事業成長につながる人材への投資とリターンを重視します。

また、従来の人事が経営や事業部門からの依頼に応じて施策を実行する「受動的」な存在だったのに対し、HRBPは事業環境の変化にあわせてリアルタイムで判断します。そして、自ら課題を発見し、解決策を提案する「能動的」な役割を担います。
 

HRBPが重要視される理由

近年、多くの企業でHRBPの導入が進む背景には、次の3つの要因が関係しています。

  • 人材獲得競争の激化と人手不足
  • 事業環境の急速な変化への対応
  • 戦略人事の重要性向上

それぞれ詳しく解説します。
 

人材獲得競争の激化と人手不足

少子高齢化に伴う労働人口の減少により、優秀な人材の確保は年々困難になっています。日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8,726万人をピークに減少を続け、2023年10月時点では7,395万人(総人口比59.5%)にまで縮小しました※。

特にIT人材やデジタル人材の獲得競争は激しく、採用数を増やすだけでは不十分で、事業戦略に適した人材の確保・育成が求められています。

また、働き方の多様化により従業員の価値観やニーズも変化しており、画一的な人事制度では人材定着が難しくなっています。事業部門のニーズを的確に理解し、個別に最適化された人材戦略を立案できるHRBPが、今まさに重要視されています。

※出典:国土交通省 国土交通白書 2024「我が国の経済社会と人口減少」
 

事業環境の急速な変化への対応

デジタル化やグローバル化の進展によって、事業環境の変化のスピードは加速しています。従来の年次計画に基づいた人事施策では、この変化に追いつけなくなっているのが現状です。

HRBPは事業部門と密に連携し、リアルタイムで組織課題を把握・解決する体制を構築できます。市場環境の変化に応じた迅速な組織再編、新規事業立ち上げ時の人材確保、働き方の急激な変化にも柔軟に対応できる点が大きな強みです。
 

戦略人事の重要性向上

「人材こそが競争力の源泉」という考え方が浸透し、経営における人事の戦略的重要性が高まっています。特にDXの進展により、業務プロセスの効率化だけでなく、変化に適応できる人材の確保・育成が企業存続の鍵となっています。

経営層の間でも、人事を単なる管理部門にとどめず、企業価値を高める戦略部門として位置付ける動きが見られるようになりました。こうした背景のなか、経営戦略と人事戦略を一体化させるHRBPの役割が注目され、導入を進める企業が増えています。
 

HRBPに求められるスキル

HRBPが組織のなかで効果的に機能するためには、以下の3つのスキルが不可欠です。

  •  経営・事業理解力
  • コミュニケーション能力
  • 分析力と戦略的な課題解決能力

これらのスキルは短期間で習得できるものではなく、継続的な学習と実務経験を通じて磨いていく必要があります。
 

経営・事業理解力

HRBPでは、経営戦略や事業計画を理解し、それを人事施策へ落とし込む力が求められます。財務諸表の読み方や市場動向の把握などの経営知識に加え、担当部門の商品やサービス、顧客や競合状況に関する理解も欠かせません。

事業特性を踏まえた人材要件の設定や組織設計ができなければ、効果的な人事戦略の実現は困難です。
 

コミュニケーション能力

HRBPは経営層、事業部門、人事部門など、様々なステークホルダーとの調整役を担います。それぞれの立場や関心事を理解し、適切に対話する力が必要です。

特に人事の専門用語をわかりやすく言い換え、事業部門に伝えることが重要です。また、時には厳しい現実を伝える場面もあり、相手の立場に配慮しつつ率直に意見を述べる姿勢も求められます。
 

分析力と戦略的な課題解決能力

HRBPには、組織や人材に関する複雑な課題を客観的に分析し、根本原因を特定した上で最適な解決策を導く力が求められます。データ分析に加えて、現場の状況を踏まえた定性的な判断を組み合わせることが重要です。

また、限られたリソースのなかで優先順位を付け、効果の高い施策から実行に移す判断力も欠かせません。施策実行後は成果を測定し、改善を重ねることで、継続的に成果の最大化を図ることが求められます。
 

HRBP導入の進め方

HRBPを組織に根付かせるためには、段階的な準備と検証が欠かせません。具体的な導入ステップは以下の4つです。

① 人事戦略の明確化と経営層の合意形成
② HRBP体制の設計と役割定義
③ 適切な人材の選定と配置
④ トライアル実施と効果検証

導入プロセス全体を通じて、関係者間のコミュニケーションを密に取り、課題や懸念事項を早期に解決していくことが大切です。

人事戦略の明確化と経営層の合意形成

最初のステップは、人事戦略を明確にし、HRBPの位置付けを定義することです。経営層がHRBPの必要性と期待される効果を理解し、導入にコミットすることが成功の鍵となります。

導入の目的や成果指標を具体的に設定し、関係者全員で共有しておくと、後の運用がスムーズになります。また、導入に伴う投資や体制変更についても事前に経営層の承認を得ておきましょう。

現状の人事課題を定量・定性的に分析し、HRBPの導入によって解決できる課題を明示することで、経営層の理解を深められます。
 

②HRBP体制の設計と役割定義

次に、既存の人事組織との役割分担を明確にし、HRBPが機能しやすい体制を設計します。従来の人事部門と業務が重複したり対立したりしないように、責任範囲や権限を明確化しましょう。

あわせて、事業部門側にも受け入れ体制を整備する必要があります。定期的な報告・相談の仕組みや、意思決定プロセスの整理を進めることで、HRBPが実務に即した支援を行いやすくなります。
 

③適切な人材の選定と配置

HRBPには高度なスキルが求められるため、社内外から適任者を慎重に選定する必要があります。人事経験だけでなく、事業部門での実務経験や経営的な視点を持つ人材を選定しましょう。

選ばれた人材には、HRBP特有のスキルを習得するための研修や教育プログラムを提供し、定期的なスキルアップの機会も設けます。継続的な成長を支援する体制を整えることで、安定した運用につながります。

従業員のスキルアップについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:リスキリングとは?企業側・従業員側のメリットや支援制度、取り組み事例などを紹介!
 

④トライアル実施と効果検証

HRBPはいきなり全社展開するのではなく、まずは限定的に試験導入し、効果と課題を検証します。小規模でも成功事例をつくることで、他部門への展開がスムーズに進められます。

導入後は定期的に成果を測定し、必要に応じて役割や体制を見直しましょう。短期的な成果だけでなく、中長期的な効果も評価することで、本格導入に向けた土台を築くための精度の高い検証が可能になります。
 

HRBP導入のポイント

HRBP導入を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 経営層の強いコミットメントを得る
  • 既存の人事部門と連携して取り組む
  • 事業部門との信頼関係を構築する

これらのポイントはいずれも相互に関連しており、どれかひとつでも欠けると、HRBPの定着は困難になります。
 

経営層からのコミットメントを得る

HRBPは組織横断的な役割を担うため、経営層の強力なバックアップが不可欠です。導入初期は既存の仕組みとの摩擦(役割の重複による対立など)が生じやすく、トップがリーダーシップを発揮しなければ制度は定着しません。

また、HRBPが提案する施策や課題提起に対し、経営層が真摯に耳を傾ける姿勢を示すことも大切です。形式的な導入ではなく、人事変革を本気で進める意思を示すことで、組織全体に導入の意義が浸透します。
 

既存の人事部門と連携して取り組む

HRBPは既存の人事部門と対立するのではなく、相互補完的に機能させる必要があります。HRBPが戦略的な役割を担う一方で、人事部門は専門性の高いオペレーション業務を担うという分業体制が理想的です。

そのためには、情報共有の仕組みや定期的な連携会議を設け、円滑に協力できる環境を整備することが重要です。現場ニーズとの乖離が起こらないよう、お互いの役割を尊重し、共通の目標に向かって協働できる文化を育みましょう。
 

事業部門との信頼関係を構築する

HRBPが効果を発揮するためには、事業部門から「信頼できるパートナー」として認識されなければなりません。初期段階から成果を曖昧にせず小さな成功を積み重ね、着実に成果を示していきましょう。

また、事業部門のニーズを深く理解し、実際に役立つ提案やサポートを継続的に提供することで、信頼関係の強化につながります。単なる人事担当者ではなく、事業成長をともに支える存在として認識されることが、HRBP成功の最終的なゴールです。
 

HRBPを導入した企業の例

すでに多くの企業がHRBPを取り入れ、人事機能の変革を進めています。以下では、国内企業3社の導入事例を紹介します。
 

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)

DeNAは2014年からHRBPの概念を取り入れ、「事業に資する人事」の実践を進めています※。

同社の特徴は、個人単位ではなくチームで戦略人事に取り組む「HRBPスクラム」という独自のフレームワークを導入した点です。複数のHRBPが連携して事業部門をサポートし、事業リーダーのパートナーとして組織課題の解決や人材戦略の立案を行っています。

リーダーとの密接な対話を通じて、時には厳しい提言も行うことで、真のパートナーシップを築くことに成功しました。

※出典:フルスイングby DeNA「「事業に資する人事」DeNAのHRBPがよくわかる記事まとめ」
 

カゴメ株式会社

カゴメは2017年度からHRBPを導入し、「野菜の会社」への変革を人材面から支援しています※。HRBPの役割は「個人のキャリア開発支援」「現場課題の明確化」「経営と本部の橋渡し」の3つに整理され、生産、営業、本社など各本部に配置されました。

また、現場経験が豊富でキャリアコンサルタント資格を持つ人材を登用し、専門性の高い支援を実現している点も特徴です。人事部門と人材開発委員会の連携により、組織全体での課題解決を推進しています。

出典:KAGOME「「人的資本経営」を目指し毎年進化するカゴメの人事制度」
 

三井化学株式会社

三井化学ではCHRO(最高人事責任者)を設置し、経営陣の一員として人材戦略の計画・実行を担っています※。さらに、各事業・機能戦略と連動して施策を実行する「Senior HRBP」を配置し、二層構造で運営している点が特徴です。

三井化学はグローバルCoC(コンピテンスセンター)体制を編成し、タレントマネジメント、組織・人材開発、グローバル報酬・ベネフィットなど様々な機能を軸にグループ・グローバルな人材戦略を推進しています。

実際に「戦略重要ポジション後継者候補準備率235%」という具体的な目標を設定し、成果の定量的な測定に注力しています。

出典:Mitsui Chemicals「人材マネジメント」
 

「HR EXPO」で
最新の人事DXソリューションを体感しよう

HRBPの導入を検討している方は、RX Japanが主催する「HR EXPO」へのご来場をおすすめします。「HR EXPO」は人事DXや人材管理、教育研修といった戦略人事に役立つソリューションが集結する日本最大級の展示会です。

会場ではタレントマネジメントシステムや組織分析ツール、人材育成プラットフォームなど、HRBP導入に欠かせない多様なサービスを比較検討できます。

さらに、実際にHRBPを導入した企業の担当者との直接対話も可能で、具体的な導入ノウハウや課題解決のヒントを得られる点も魅力です。

人事担当者だけでなく、経営層や事業部門責任者にとっても最新の人事トレンドを把握できる貴重な機会となるでしょう。

ぜひ「HR EXPO」に参加し、自社の人事変革に必要な情報と人脈を獲得しましょう。

HR EXPO

【開催スケジュール】

■【名古屋】総務・人事・経理Week

2026年2月25日(水)~27日(金) ポートメッセなごや

■【東京】総務・人事・経理Week [春]
2026年6月17日(水)~19日(金) 東京ビッグサイト

■【東京】総務・人事・経理Week[秋]
2026年9月16日(水)~18日(金) 東京ビッグサイト

■【関西】総務・人事・経理Week
2026年11月18日(水)~20日(金) インテックス大阪
 

HRBPで戦略人事の実現と競争力強化を同時に叶える

HRBPとは、経営戦略と人事戦略を結びつけ、事業成長を人材面から支える役割です。従来の人事とは異なり、事業理解に基づいて施策を立案し、迅速かつ効果的に課題を解決します。

人材獲得競争の激化や環境変化が厳しい現代では、HRBPの導入は企業の持続的成長に欠かせない投資のひとつです。実際の企業事例が示すように、適切なプロセスと経営層の強いコミットメント、現場との信頼関係、DXの活用があれば、戦略人事を通じた競争力強化が可能になります。

HRBPの導入を検討している企業は、最新のソリューションや成功事例を直接確認できる「HR EXPO」への参加をぜひご検討ください。

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■監修者情報

羽場 康高(はば やすたか)
社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。