反社チェックとは?
対象範囲や実践方法、関わりが判明した場合の対処法を解説

反社チェックとは?
対象範囲や実践方法、
関わりが判明した場合の対処法を解説

企業活動において反社会的勢力との関係遮断は、コンプライアンスの基本であり、企業の存続に関わる重要課題です。意図せず反社会的勢力と取引してしまうと、社会的信用の失墜や行政処分などの深刻なリスクに直面する可能性があります。

本記事では、反社チェックの目的や必要性、チェックすべき対象範囲から具体的な実践手法、さらには関わりが判明した場合の対処法まで詳しく解説します。自社のリスク管理体制を強化したい方は、ぜひ参考にしてください。
 

反社チェックとは?

反社チェックとは、企業が取引先や役員、従業員、株主などが反社会的勢力に該当しないか、または関係がないかを確認するための調査です。

政府は2007年に「反社会的勢力」を「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義しています。具体的には、暴力団やその関連企業、総会屋などが含まれます。

これらの勢力は、表向きは合法的な事業者を装って接触してくるため、企業側が事前に十分な調査を行わなければなりません。反社チェックは単なる形式ではなく、法令遵守や社会的責任を果たすための重要なリスク対策のひとつです。

※出典:法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」
 

反社チェックが必要な3つの理由

反社チェックが必要な理由は主に以下の3つがあげられます。

① 反社会的勢力への資金提供を断つため
② 法令遵守とCSR推進を両立するため
③ 企業存続と信用維持のため

それぞれ詳しく見ていきましょう。
 

①反社会的勢力への資金提供を断つため

反社チェックを行う主な理由は、反社会的勢力への資金の流入を防ぐことです。反社会的勢力と取引を行うと、その組織の活動資金となり、結果的に犯罪行為を助長するおそれがあります。

全ての企業が反社チェックを徹底することで、反社会的勢力の活動資金を断ち、社会全体で排除する流れを形成することが求められます。
 

②法令遵守とCSR推進を両立するため

反社チェックは、法令遵守(コンプライアンス)と企業の社会的責任(CSR)の両立にもつながります。政府の指針や各地の暴力団排除条例により、企業には反社会的勢力と関わらない姿勢が求められています。

企業活動に対する社会の目が厳しさを増しているなか、反社チェックを継続的に行うことは、責任ある企業としての信頼を築くためにも重要です。
 

③企業存続と信用維持のため

反社会的勢力との関係が表面化すれば、企業は社会的信用を大きく損ない、事業の継続すら危うくなるおそれがあります。取引先との契約解除や金融機関からの融資打ち切りに加え、上場企業であれば上場廃止に至るケースにも発展しかねません。

また、反社チェックを怠ったことで反社会的勢力と取引した場合、取締役が善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)違反として責任を問われる可能性もあります。企業の持続的な成長と存続のためには、反社チェックを徹底し、企業価値と信用を守ることが大切です。

反社チェックの対象範囲

反社チェックは、企業活動に関与する全ての関係者を対象に行う必要があります。主な対象は以下のとおりです。

  • 取引先企業
  • 自社の役員・従業員
  • 株主・出資者

 

取引先企業

取引先の反社チェックは、取引先の企業そのものだけでなく、取引先企業の役員や株主、顧問弁護士や税理士などの外部関係者も対象です。新規取引の際は契約前に調査を行いましょう。調査結果が出る前に契約を結ぶ場合は、契約書に反社会的勢力の排除に関する条項を記載します。反社条項の削除を求められた場合は警戒が必要です。

既存の取引先であっても、状況の変化によって反社会的勢力と関係を持つ可能性があるため、1〜3年に一度は定期的な再調査が必要です。チェックを怠った場合、後から反社会勢力との関係が発覚すれば、取締役が善管注意義務違反を問われるおそれもあります。
 

自社の役員・従業員

自社の役員や従業員も反社チェックの対象です。役員は、就任前の段階で経歴や関係先を含めて慎重に調査します。必要に応じて家族や親族、過去に関わった企業まで調査の範囲を広げましょう。

従業員に関しては、正社員だけでなくアルバイトやパートなども含めて採用前の段階で確認が必要です。近年では、SNSを介して若年層と反社会的勢力が接触するケースも報告されており、内定者や学生アルバイトに対しても事前に調査する必要があります。
 

株主・出資者

株主や出資者も企業にとって重要なステークホルダーであり、反社チェックの対象です。新たな資本参加や株主の変更がある際には、相手が反社会的勢力と関係していないかを十分に確認する必要があります。

調査対象は個人投資家だけでなく、法人株主の場合はその役員や主要株主、顧問弁護士、顧問税理士など関係者にもおよびます。全ての株主調査するのが難しい場合は、出資比率や企業に対する影響力の大きさを踏まえ、主要株主から優先して確認しましょう。
 

反社チェックの方法

反社チェックには、以下の4つの方法があります。

  • 公知情報(インターネット・新聞)による検索
  • データベース・チェックツールの活用
  • 興信所・調査会社への依頼
  • 警察・暴追センターへの照会

取引の重要度や対象者の立場に応じて、適切な手段を選ぶことが大切です。必要に応じて複数の方法を組み合わせることで、より信ぴょう性の高い判断が可能になります。幅広い情報源から多角的に確認し、反社との関係性を慎重に見極めましょう。
 

公知情報(インターネット・新聞)による検索

反社チェックの初期段階では、インターネットや新聞などのオープンソースを活用した情報収集が一般的です。企業名や個人名を検索エンジンで調べたり、新聞記事のデータベースや商業登記簿をチェックしたりする方法があります。

費用をかけずに実施できるのが大きなメリットですが、膨大な検索結果の中から有用な情報を見つけ出すには時間と労力がかかります。また、情報の信頼性や更新頻度が不明確な場合もあるため、見つけた情報が事実かどうかを慎重に見極めなくてはなりません。

情報の正確性を高めたい場合は、他の手法と組み合わせて活用するのがおすすめです。
 

データベース・チェックツールの活用

専用の反社チェックツールやデータベースサービスを利用することで、効率的な情報収集が可能です。これらのツールは新聞記事やウェブニュース、公的なリリース情報などを一元的に検索できる機能を備えており、反社関連の情報を自動で抽出できます。

調査会社への依頼と比べてコストが抑えられる上、多数の対象者を一括でチェックできるのが利点です。ただし、ツールごとにデータの更新頻度や精度に差があるため、自社の目的に適したものを選定する必要があります。

各ツールのカバー範囲や情報源の違いを調べたり、法務関係の展示会に参加したりして自社に最適なものを選びましょう。
 

興信所・調査会社への依頼

より詳細な背景調査が必要な場合や疑わしい点がある対象に関しては、専門の調査機関への依頼を検討しましょう。興信所や調査会社は、独自のネットワークと調査ノウハウを活かし、公開情報だけでは得られない背景情報や関係性を明らかにすることが可能です。

経歴や交友関係、過去の犯罪歴など幅広い情報を調査対象に応じて収集し、詳細なレポートが数日から数週間で提供されます。ただし、費用が高額になりやすいため、全ての対象に使うのではなく、取引の規模や重要度を踏まえて限定的に活用しましょう。
 

警察・暴追センターへの照会

反社の疑いが強い場合や、最終的な確認が必要な場面では、公的機関への照会が有効です。全国および都道府県に設置されている暴力追放運動推進センター(暴追センター)は、暴力団排除活動の一環として反社情報を提供しています。

ただし、情報提供には条件があり、企業側の照会目的や情報管理体制が審査されます。照会の際には、対象者の氏名・住所などの基本情報や契約資料、疑義の根拠などの提出が必要です。

また、自社の反社排除方針や反社条項の有無も判断材料となるため、社内体制を整えておきましょう。
 

反社との関わりが判明した場合の対処法

反社チェックの結果、反社会的勢力との関係が確認された、あるいは強く疑われる場合は、速やかに社内で情報を共有し、専門家に相談することが重要です。

対応を誤れば自社の安全や評判が脅かされるため、警察や各都道府県の暴追センター、弁護士など信頼できる専門機関に早期に連絡を取り、適切な指導を受けましょう。

取引を中止または契約を解除する際には「反社であること」を理由として明言せず、「当社の審査基準により取引できない」など、簡潔かつ抽象的な説明にとどめるのが望ましいです。明確な理由を伝えてしまうと、相手から反論や不当要求を受ける可能性があります。

すでに契約を結んでいる場合は、あらかじめ契約に盛り込んでおいた反社条項を根拠に解除を進めます。ただし、報復などのリスクも想定されるため、対応は必ず弁護士などの専門家と連携しながら慎重に進めることが重要です。
 

反社チェックの注意点

反社チェックは一度きりで完了するものではなく、定期的に実施することが大切です。

初回のチェックで問題が見つからなかった取引先でも、後に反社会的勢力と関係を持ったり、支配下に置かれたりするケースは珍しくありません。1〜3年に一度は再調査を行い、常に最新の状況を把握できる体制を整えましょう。

また、「この会社は大丈夫だろう」といった思い込みによる判断は禁物です。必ず客観的な基準に基づいて調査を行い、属人的な対応にならないよう留意しましょう。

調査結果は必ず記録に残し、実施日や方法、判断の根拠などを文書化しておくことも重要です。後にトラブルが起きた場合、証拠として活用できる可能性があります。反社チェックの過程で得た個人情報は、個人情報保護法に則り、適切に管理・保管しましょう。
 

「法務・コンプライアンスEXPO」なら
最新トレンドや事例を学べる

企業のリスクマネジメント体制を見直したいなら、「法務・コンプライアンスEXPO」への参加をおすすめします。本展示会は、法令遵守や企業倫理に関する最新のソリューションやサービスが集まるビジネスイベントです。

反社チェックツールをはじめ、内部通報システム、情報セキュリティ対策、ハラスメント防止研修など、業務効率化や法務強化に関する情報が多数紹介されます。各ソリューションを比較検討できるだけでなく、専門家から直接アドバイスを受けられる点も大きな魅力です。

また、コンプライアンス関連サービスを提供する企業にとっては、来場企業とのマッチングや新たなリード獲得の機会となります。最新の事例やトレンドを把握したい方は、ぜひ「法務・コンプライアンスEXPO」への参加をご検討ください。
 

法務・コンプライアンスEXPO

【開催スケジュール】

■【東京】総務・人事・経理Week
2025年9月10日(水)~12日(金) 幕張メッセ

■【関西】総務・人事・経理Week
2025年11月19日(水)~21日(金) インテックス大阪
 

反社チェックの精度を高めて
リスクマネジメントを強化しよう

反社会的勢力との関係遮断は、コンプライアンスの根幹であり、企業が果たすべき社会的責任のひとつです。反社チェックの体制を整え、取引先だけでなく役員・従業員・株主・出資者・外部委託先まで幅広く調査することで、予期せぬリスクを未然に防げます。

また、定期的なチェックの実施や、状況の変化に応じた柔軟な対応ができる仕組みを構築しておくことも大切です。万が一反社会的勢力との関係が明らかになった場合は、専門家の助言を受けながら、冷静かつ毅然とした対応を徹底しましょう。

企業の信頼性を高め、持続的な成長を実現するためにも、透明性の高い経営を継続する姿勢が求められます。反社チェックの最新動向やツールに関心がある方は、「法務・コンプライアンスEXPO」への参加もあわせてご検討ください。

「法務・コンプライアンスEXPO」詳細はこちら


■監修者情報

古関 俊祐(こせき しゅんすけ)
弁護士

弁護士法人HAL代表弁護士。消費者金融、銀行ローン各社との債務整理、過払金請求事件などを多数取り扱い活躍中。債務整理案件だけでなく、保険や不動産など財産にまつわる問題、離婚や相続など家庭内の問題など、個人の生活において避けては通れない様々な問題について幅広く対応している。

HP:https://shinkoiwa-law.jp/