男性の育休期間の平均は?
取得率から給付金などの支援制度まで詳しく紹介
男性の育休期間の平均は?
取得率から給付金などの
支援制度まで詳しく紹介
育児休業(育休)を取得する男性は増加しています。「令和5年度雇用均等基本調査」によれば、配偶者が出産した男性のうち、育休を取得した男性は30.1%と、前回の調査(17.13%)、前々回の調査(13.97%)と比較し、大きな伸びを見せました※。
本記事では、男性の育休取得率や平均育休期間を解説します。また、男性が育休を取得する際に知っておきたい法律上のルールや育休取得によって得られるメリット、活用できる経済的支援制度も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
※出典:厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査の結果概要」
男性の育休とは?
男性の育児休業(育休)とは、配偶者が出産した時に取得できる休業制度のことです。
産後パパ育休(出生時育児休業)制度と育児休業制度があり、条件を満たす男性はそれぞれ別個に取得できます。また、産後パパ育休制度では労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中も就業が可能です。
|
産後パパ育休(出生時育児休業)制度※ |
育児休業制度※ |
対象期間 |
子の出生後8週間以内に4週間(28日)まで取得可能 |
原則として子が1歳(最長2歳)まで取得可能 |
申請期限 |
原則として休業の2週間前まで |
原則として1ヶ月前まで |
分割取得 |
最初にまとめて申請すれば、分割して2回取得可能 |
取得時にそれぞれ申請すれば、分割して2回取得可能 |
休業中の就業 |
労使協定を締結している場合は、労働者が合意した範囲で就業可能 |
原則として就業不可 |
なお、産後パパ育休制度は、原則として休業の2週間前までに申請しなくてはいけませんが、義務付けられている育休制度の内容を上回る取り組みを事業主が労使協定で定めている場合に限り、1ヶ月前までの申請制度にできます。
また、産後パパ育休制度と育児休業制度以外にも、企業によっては独自の育休制度を実施していることがあります。利用できる条件や対象期間も異なるため、就業規則などで確認しましょう。
※出典:厚生労働省「育児・介護休業法 令和3年(2021年)改正内容の解説」
男性の育休取得は義務?
男性が育休を取得することは義務ではありませんが、企業が育休を取得しやすい環境をつくることは以下のように義務化されています※。
短時間勤務等の措置 |
3歳に達するまでの子を養育する労働者について、労働者が希望すれば利用できる短時間勤務の措置(1日原則6時間)を義務づけ |
時間外労働の制限 |
小学校就学前までの子を養育する労働者が請求した場合、1ヶ月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限 |
転勤についての配慮 |
労働者を転勤させる場合の、育児の状況についての配慮義務 |
所定外労働(残業)の制限 |
3歳に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、所定外労働を制限 |
不利益取扱いの禁止 |
育児休業等の申出・取得等を理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁止 |
労働者が気兼ねなく育休を申請でき、スムーズに手続きできるように、社内環境を整えていくことが求められます。
※出典:厚生労働省「企業のご担当者の方 育児休業制度とは」
男性の育休期間はいつからいつまで?
産後パパ育休制度では、子の出生後8週間以内に4週間(28日)まで育休を取得できます。最初に申請すれば2回に分けて取得可能なため、配偶者と相談した上で、育休のスケジュールを決めましょう。
一方、育児休業制度では、子が1歳(最長2歳)に達するまで育休を取得できます。父母ともに育休を取得する場合は、「パパ・ママ育休プラス」が適用され、子が1歳2ヶ月に達するまでの間の1年間の育休取得が可能です。
男性の育休は延長できる?
パパとママの両方が育休を取得する場合は、「パパ・ママ育休プラス」により、子が1歳2ヶ月になるまで育休期間を延長できます。
ただし、ママの育休開始日がパパの育休開始日より前の時は、ママは子が1歳になるまでしか育休を取得できません。ママが、子が1歳2ヶ月になるまで育休の取得を希望する場合は、パパがママよりも先に育休を開始することが必要です。
男性の育休期間の平均
厚生労働省の「令和5年度 男性の育児休業等取得率の公表状況調査(速報値)」によれば、回答企業での男性育休期間は平均46.5日でした※1。なお、育休を取得した男性のみを対象としているため、配偶者が出産した全ての男性を対象とするならば、平均育休期間は46.5日よりも短くなります。
この調査は従業員1,000人超の大企業を対象としていること、また、回答した企業(回答率:33.4%)のみを対象としていることから、全国の男性労働者の実情を表しているとはいえない点にも注意が必要です。
実際に回答企業における男性の育休取得率は46.2%でしたが、全ての企業を対象とした「令和5年度雇用均等基本調査」では、男性の育休取得率は30.1%と乖離があります※2。
また、「令和5年度雇用均等基本調査」によると、育休を取得した男性のうち、育休期間が1ヶ月以上のケースは 41.9%、5日~2週間未満が 22.0%、2週間~1ヶ月未満が 20.4%でした。
2週間以上取得する割合は62.3%と、令和3年度調査(48.3%)や平成30年度調査(28.5%)よりも大きく増加しています※2。
【男性の取得期間別育児休業後復職割合※2】
|
5日未満 |
5日~2週間未満 |
2週間~1ヶ月未満 |
1ヶ月以上 |
平成30年度 |
36.3% |
35.1% |
9.6% |
18.9% |
令和3年度 |
25.0% |
26.5% |
13.2% |
35.1% |
令和5年度 |
15.7% |
22.0% |
20.4% |
41.9% |
注:小数点以下の扱いにより、合計が100%にならないことがあります。
男性の育休取得率
「令和5年度雇用均等基本調査※」によれば、男性の育休取得率は30.1%でした。また、配偶者が出産した男性のいる事業所のうち、育休を取得した男性がいた事業所の割合は37.9%でした。
育休を取得する男性や育休を取得する男性のいる事業所はともに増加しています。2022年10月1日から産後パパ育休制度が創設され、さらに育休を取得しやすい環境になりました。また、育児に対する考え方の変容もあり、今後も育休取得率は増加すると予想されます。
※出典:厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査の結果概要」
男性の育休取得のメリット
男性の育休取得は、雇用主・従業員の双方にメリットがあります。
雇用主側のメリット
雇用主側の主なメリットは、以下のとおりです。
● 企業イメージの向上
● 定着率向上
● 業務量・バランスの標準化
● 助成金の獲得
● 生産性の向上
● チームワークの強化
男性が積極的に育休を取得するようになれば、働きやすい職場として認識されるようになり、企業イメージが向上します。また、定着率の向上や採用希望者の増加も見られるようになるでしょう。
育休取得中は、他の従業員が業務を担当する必要があります。業務量やバランスを見直すきっかけとなるだけでなく、業務の属人化を回避できます。
従業員の育休取得により、企業が助成金を受給できるケースもあります。例えば、中小企業を対象とした両立支援等助成金は、育休取得者や復職者の人数に応じて助成金が支給される制度です。ただし、申請期間や条件が変更されることもあるため、最新の情報を確認の上、条件を満たす場合に申請しましょう。
育児が必要な時に休業して離職せず子育てに専念し、仕事と家庭の負担軽減によりストレスや疲労感を改善することで仕事との両立が実現しやすくなります。そして、ワークライフバランスが整えば仕事に集中しやすくなるため生産性の向上も図れます。
男性・女性を問わず育児を実施することにより、他の従業員の育休にも理解や配慮を示しやすくなり、チームワークの強化にもつながるでしょう。
従業員側のメリット
従業員側の主なメリットとしては、以下のとおりです。
● 育児負担の分散
● ストレス軽減
● 妻のキャリア形成の後押し
● 従業員同士で相手の状況を思いやれる
必要に応じてパパ・ママが交代で、あるいは同時に育休を取得することで、家庭内で育児の負担を分散できるようになります。パパ・ママのどちらか片方に育児の負担が偏ることが減り、ストレス軽減も図れるでしょう。
また、パパが育児を積極的に実施しない場合、ママは育休期間終了後も自分だけに育児の負担がかかると判断し、復職しないという選択をする可能性があります。しかし、パパが育休を取得することでパパ・ママが協力して育児をするスタイルが完成すれば、ママの復職やキャリア形成の後押しにもなるでしょう。
従業員同士で相手の状況を思いやれるのもメリットです。お互いが相手の立場や事情を尊重するようになれば、より働きやすい職場となり、休業や復職へのハードルが下がります。
男性の育休取得のデメリット
メリットの多い男性の育休取得ですが、デメリットとして受け取られる要素もあります。
雇用主側のデメリット
雇用主側にとってのデメリットとしては、以下のとおりです。
● 労働力の減少
● 適切なサポートの検討に時間がかかる
労働力が減るため、他の従業員やアウトソーシングサービスなどで補う必要があります。業務の分担やサービスの選定に時間がかかることに加え、育休取得者と同程度のクオリティやスピードでの対応ができるとは限らないため、生産性も低下するかもしれません。
また、育休取得者や復職者への配慮が必要ですが、具体的なサポートを検討するには時間がかかります。業務時間が増えるだけでなく、管理者の意識改革も必要になるため、研修やセミナーといった教育も検討する必要性が生じます。
従業員側のデメリット
従業員にとってのデメリットは以下のとおりです。
● 収入が減る
● 取得しにくい職場もある
育休取得中は収入が50~67%に減ります。育児休業給付金は非課税のため、実質は本来の8割程度は受給できますが、一時的とはいえ収入が減ることで生活が厳しくなる恐れがあります。
また、職場によっては男性の育休への理解がなく、取得しにくいケースもあるでしょう。誰もが必要に応じて育休を取得できるよう、育休は労働者の権利であることや育休の大切さについて普段から啓蒙することが必要です。
育休期間に利用できる経済的支援制度
育休期間の生活をサポートする公的な経済的支援として、次の制度があります。
● 育児休業給付金
● 出生後休業支援給付金(2025年4月創設)
● 育児時短就業給付金(2025年4月創設)
● 育休期間中の社会保険料免除
● 育休終了後の社会保険料免除の特例
● 年金額計算の特例
● 財形非課税貯蓄の特例
なお、制度適用の条件や内容が変更されることもあるため、育休取得前に確認しておきましょう。また、企業によっては独自の経済的支援制度を実施していることもあります。
育児休業給付金
1歳未満(最長2歳)の子を養育するために育休を取得している間は、給付金を受給できます。産後パパ育休の場合は「出生時育児休業給付金」として休業開始時賃金日額の67%相当、育児休業の場合は「育児休業給付金」として支給日数の合計(産後パパ育休も含む)が180日までは67%相当、それ以降は50%相当の受給が可能です。
なお、出生時育児休業給付金と育児休業給付金はいずれも非課税のため、実質の手取りは通常の8割程度になります。
出生後休業支援給付金
子の出生直後の一定期間に両親ともに育児休業を取得した場合、「出生時育児休業給付金」または「育児休業給付金」とあわせて「出生後休業支援給付金」として休業開始時賃金日額の13%相当額を最大28日間分支給する給付金です。
育児時短就業給付金
2歳に満たない子を養育するために時短勤務した場合に、育児時短就業前と比較して賃金が低下するなどの要件を満たす場合に、原則として育児時短就業中に支払われた賃金額の10%相当額を支給する給付金です。
ただし、育児時短就業開始時の賃金水準を超えないように調整されます。
育休期間中の社会保険料免除
育休取得中は健康保険、厚生年金保険、国民年金保険の保険料の納付は免除されます。
なお、社会保険料は免除されますが、保険は適用されるので、休業中も医療費の負担が急激に増えることはありません。
育休終了後の社会保険料免除の特例
育休終了後に復職し、育児などを理由に報酬が低下した場合は、従業員の申請により標準報酬月額を改定できることがあります。
実際の報酬に応じた標準報酬月額が適用されると、社会保険料の負担軽減につながります。
年金額計算の特例
3歳未満の子を養育する時は、標準報酬月額が減少しても、年金計算においては従前の標準報酬月額が適用されます。
そのため、将来受け取れる年金額が減りにくく、老後資金も確保しやすくなります。
財形非課税貯蓄の特例
財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄(財形非課税貯蓄)は、原則として定期的な払い込みを2年間中断すると、利子などに対する非課税措置を受けられなくなってしまいます。しかし、3歳までの子を養育するための育休など(産前産後休業も含む)を取得する場合は、利子などの非課税措置が適用されます。
ただし、財形非課税貯蓄の特例が適用されるには、所定の手続きが必要です。非課税措置の適用を受けたい時は、忘れずに手続きをしましょう。
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■監修者情報
羽場 康高(はば やすたか)
社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
HP:https://www.lifestaff.net/