週休3日制の義務化はいつから開始される?
メリット・デメリットや導入事例を紹介!
週休3日制とは、1週間に3日の休日を設定する制度です。近年、ワークライフバランスを改善して優秀な人材を確保するために、働き方改革の一環で週休3日制を実施する企業が増加しつつあります。
実施する企業が増える昨今、人事・人材開発に携わっている方は、「週休3日制義務化はいつから開始されるのだろう」と気になっているかもしれませんが、2025年3月時点では義務化されているわけではなく、企業の裁量で実施するかどうかを選択可能な状態です。
本記事では、週休3日制に関して詳しく解説します。雇用主および従業員にとってのメリット・デメリットや具体的な導入事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
週休3日制とは
週休3日制とは、1週間に3日の休日を設定する(4日働く)制度です。なお、全従業員に対して強制的に3日の休日を設定するのではなく、希望する従業員に対してのみ設定する制度を「選択的週休3日制」と呼びます。
以下、週休3日制のパターン、および、公務員や会社員の選択的週休3日制がいつから導入されるのかを紹介します。
「週休3日制」のパターン
週休3日制には、以下に示す3つのパターンがあります。
● 給与維持型:労働時間が短縮されても、週休2日制の場合と同じ金額の給与が支払われる
● 総労働時間維持型:1日の労働時間が増え、1週間あたりの労働時間が維持される
● 給与減額型:労働時間の減少に応じて給与も減額される
給与減額型では、労働時間・給与(給料)が維持されないため、収入が減少します。強制的に全従業員に適用する場合、お金を稼ぎたい従業員は不満を感じるかもしれません。
公務員の選択的週休3日制はいつから導入される?
国家公務員に関しては、2025年4月から全職員に対して選択的週休3日制が実施される予定です。なお、これまでは育児・介護などの事情がある職員を対象として実施されていました。
地方公務員や会社員に関しては、自治体・企業ごとに対応が異なりますが、選択的週休3日制を実施するケースも出てきています。
日本で週休3日制は義務化されていない(2025年3月時点)
日本で週休3日制は義務化されていない
(2025年3月時点)
2025年3月時点では、週休3日制や選択的週休3日制の実施は「法的な義務」ではなく、義務化される予定もありません。現時点では、各企業の裁量で実施することも、実施しないことも選択可能です。
なお、厚生労働省は、多様な働き方を実現してワークライフバランスを改善する観点から、選択的週休3日制の導入を推奨しています。
現行の労働基準法では、「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」ことに加え、「休日は週1日以上でも労働時間側に”週40時間まで”」という規定がありますが、「週に2日または3日の休日を与えなければいけない」という規定は存在しません。
週休3日制のメリット
週休3日制・選択的週休3日制は、従業員側だけがメリットを享受できる制度ではありません。企業(雇用主)側も、様々なメリットを享受できます。以下、双方の主なメリットを紹介します。
企業側のメリット
週休3日制や選択的週休3日制を実施すると、育児や介護などと仕事を両立しやすいため、離職率の低下(定着率の向上)を期待できます。週休3日制・選択的週休3日制を導入した上で、就職説明会などで魅力的な労働環境であることを紹介すれば、優秀な人材の獲得につながります。
特に、給与維持型の場合は、給与の額面が変わらずリフレッシュする時間を充分に確保できるため、従業員のストレスが減少し、業務の効率やクオリティが向上する点も魅力です。
オフィスのスペースを狭くでき、賃料や水道光熱費を削減できることも、週休3日制や選択的週休3日制の利点です。
従業員側のメリット
週休3日制が導入されると、従業員が自由に使える時間が増加します。その結果、スポーツを楽しんだり、資格取得のために学習したり、副業に従事したりできるため、人生の選択肢が増えて幸福度が高まる場合があります。
また、育児や介護と仕事を両立しやすい点も週休3日制の魅力です。育児や介護に専念するために離職せずに済み、収入面で不安を抱えずに家族のために時間を使えます。
なお、副業については就業規則で禁止されている場合もあるため、勤め先の就業規則を確認しましょう。
週休3日制のデメリット
週休3日制を導入すれば、前述したように、企業(雇用主)側も従業員側も様々なメリットを享受できます。ただし、いくつかのデメリットもある点に注意が必要です。以下、企業と従業員の双方が被る主なデメリットを紹介します。
企業側のデメリット
週休3日制を導入すると、業務に対応できる従業員が出勤していないことが原因で、機会損失が生じる可能性があります。特定の従業員しか把握していない事項に関して外部から問合せがあった場合、対応の遅れによってクレームに発展するかもしれません。
また、勤怠管理業務が煩雑化する点も週休3日制のデメリットです。選択的週休3日制の場合、2日しか休日を取得しない従業員と、3日の休日を取得する従業員が社内に混在します。労務管理システムなどを用いて各従業員がいつ出勤するのかを正確に把握し、適切に人員を配置することが不可欠です。
従業員側のデメリット
総労働時間維持型の週休3日制では、出勤する日の労働時間が増加します。保育園や幼稚園に通っている子どもがいる従業員に関しては、毎日、決まった時間に子どもを送迎するケースも見受けられます。始業・終業時刻が変化すると、送迎できない状況に陥ることもあるでしょう。
給与減額型の週休3日制では、収入が減少するため、不満を感じるかもしれません。
また、いずれのパターンであっても、休日が3日あることにより、チームメンバーが一堂に会してコミュニケーションできる機会が減少します。接触頻度や情報伝達が不十分になると人間関係に悪影響がおよび、思い込みや誤解など情報不足、対話不足からトラブルが生じたりモチベーションが低下したりするかもしれません。
週休3日制の導入事例
2025年3月時点では、週休3日制の実施は義務化されていません。しかし、企業の裁量で週休3日制を導入することは可能で、少しずつ実施例が増加しています。以下、国や地方自治体、民間企業における週休3日制の導入事例(実施予定のケースを含む)を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
国家公務員の事例
国家公務員に関しては、これまでは育児・介護などの事情がある職員限定で選択的週休3日制が実施されていました。2025年4月からは、対象が拡大され、全職員に対して選択的週休3日制が実施される予定です。
なお、週休3日制のパターンは1週間の労働時間が変わらない「総労働時間維持型週休3日制」とされています。
地方公務員(東京都職員など)の事例
地方公務員に関しては自治体によって対応が異なり、実施されている自治体と実施されていない自治体があります。
千葉県では、すでに2024年6月から選択的週休3日制が導入されています。休日に設定した日の労働時間7時間45分は、他の出勤日に振り分け、朝9時から午後8時頃まで勤務する仕組みです。休日が増えても、総労働時間は変わらないため給料も変わりません。
なお、2024年12月3日に東京都知事の小池百合子氏は、2025年度から週休3日制を実施することを都議会における所信表明演説で宣言しました。具体的には、2025年度からフレックスタイム制度の運用を変更し、選択的週休3日制を開始する方針です。
民間企業の事例①社会福祉法人
ここからは、民間企業の事例を3つ紹介します。ひとつ目は、特別養護老人ホームの運営やショートステイ、デイサービスなどを実施している社会福祉法人太樹会 和里(にこり)のケースです。
和里では、2019年に「勤務時間限定正社員制度」を導入し、希望する場合、以下に示す3パターンから勤務形態を選択できる体制を整えました
1. 1日7時間で週5日勤務
2. 1日6時間で週5日勤務
3. 1日8時間で週4日勤務
なお、上記のうち、3は「選択的週休3日制」に該当します。従業員の離職を防ぎ、長く働き続けてもらうことが、「勤務時間限定正社員制度」を導入した理由です。
民間企業の事例②建設業
2つ目は、建設業を営む株式会社サカイエステックの事例です。株式会社サカイエステックでは、誰もが働きやすい職場づくりを目指し、様々な施策を実施しています。
「多様な正社員」という理念を掲げ、これまでにリモート勤務や週休3日制・週休4日制などを導入してきました。週休4日制は、高齢従業員の要望で2022年に導入した仕組みです。なお、1日の勤務時間は通常(週休2日制の場合)と同じで、希望すれば週休2日制に戻ることも認められています。
民間企業の事例③医薬品製造販売事業
3つ目は、医薬品の研究・開発・製造・販売事業などを営む塩野義製薬株式会社の事例です。塩野義製薬株式会社では、社外での学びを業務に還元することを期待して2021年10月に選択的週休3日制を導入し、副業許可基準も見直しました。
選択的週休3日制は、年度単位で利用できます。なお、所定労働時間に応じた給与が支給される仕組みです(所定労働時間は通常の5分の4で、給与は原則80%相当の金額が支給)。
「総務・人事・経理Week」で
週休3日制の実施に役立つツール・サービスを探そう
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ツール・サービスを探そう
RX Japanが主催する展示会「総務・人事・経理 Week」では、多様な働き方の導入に役立つツール・サービスが数多く展示されます。
週休3日制に限らず、企業や従業員にとってより良い働き方の制度を構築したいとお考えの方は、ご来場の上、ツール・サービス(労務管理システムなど)に関する最新情報を収集してみてはいかがでしょうか。
また、「総務・人事・経理Week」は、週休3日制の実施に役立つツール・サービス(労務管理システムなど)を開発・販売している企業にとっても有用な展示会です。新規顧客の開拓につながるため、ぜひ出展をご検討ください。
週休3日制は義務化されていないが、
企業の裁量で導入できる
2025年3月上旬時点では、週休3日制の実施は法的な義務ではなく、義務化される予定もありません。ただし、企業の裁量で実施することは可能です。優秀な人材を確保するために、週休3日制を導入し、働きやすい職場環境を就職説明会などで紹介してはいかがでしょうか。
RX Japanが主催する展示会「総務・人事・経理 Week」では、多様な働き方制度の導入に役立つツール・サービス(労務管理システムなど)が多数展示されます。
企業の働き方改革に携わっている方は、ご来場の上、最新情報を収集してはいかがでしょうか。また、多様な働き方の実施に役立つツール・サービス(労務管理システムなど)を開発・販売している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
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■監修者情報
羽場 康高(はば やすたか)
社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
HP:https://www.lifestaff.net/